いいな~幸せだな~こんなお話を読めるなんて・・・。万人にお薦めしてしまう、切なくも懐かしい香りが漂う、青春グラフィティの傑作なのだ。60年代の後半、まだどこかで戦後を引きずりながらも、高度経済成長に邁進する、そんな時代に生きた大都会ど真ん中の高校生の物語。青山と麻布と六本木に挟まれた谷間・霞町。そんな町を故郷にし、大学受験を控えた高校生の僕は、車、ディスコ、勉学、それと恋。暖かな家族に見守られながらも、目いっぱい青春を謳歌していた。
浅田次郎の分身とも言える「僕」は、要領がよく享楽的にも見えるが、常に優しさを忘れない。だからいつも耀いて見えるのだろう。それにしても家族とのエピソードが実に良い。もと深川の売れっ子芸者だった、美しく江戸っ子気質の祖母。明治時代からの写真館を守り続ける、頑固で呆けた祖父。その弟子のカメラマンの父。そして芝居好きの優しい母。それぞれが繰り為す味わい深いエピソード。そのどれもが眩しいぐらいにキラキラと耀き、そして切ないのだ。中高生から年寄りまで、どんな人にも読んでもらいたい、傑作の連作短編集なのである。