次から次へと様々な物語を紡ぎだす恩田陸の、一風変わった「ファンタジーミステリー」。1,600枚の大長編なのだ。死者と会うことができるという霊地「アナザー・ヒル」での、不思議で魅惑的な物語。
懐かしい故人と再会できる聖地―アナザー・ヒル。死者たちを『お客さん』と呼び、年に1ヶ月だけ温かく迎えるヒガンという祝祭空間。文化人類学の研究のために来たジュンは、そこで生じた連続殺人事件に巻き込まれ、アナザー・ヒルの危機に立ち向かうことになる。連続殺人、不可思議な風習、天変地異、そこに新たな事件が・・・。
このような長編ファンタジーでは、その世界観にハマレば、壮大な物語の中にドップリ浸かることができる。だから最初の段階で、その世界のルールを納得できるかがカギとなる。『ネクロポリス』は、いつもの恩田陸のように、ミステリアスなエピソードで幕が上がる。しかし、なかなかこの不思議な世界を理解できず、敷居が高いと感じた。だが何となくルールが分かってくると、お話の異世界にドンドンと引き込まれていくのだ。だから上巻だけで止めるわけにはいかない。ま~それにしても、最後まで絶好調というわけではなく、ラストは尻すぼみの感があるのだが・・・。
似たような世界としては、山口雅也の怪作『生ける屍の死』がある。このトンデモ・ミステリーは、死者が蘇るだけでなく、ゾンビ探偵なるものまで登場するのだ。しかしこの異様な設定の意図は明らかで、殺された被害者が証言できる世界において、ミステリーが成立するのか?という命題に対する答えだった。なので、あくまでミステリーとしてのルールは守ろうという努力はしていた。
この『ネクロポリス』でも殺人事件が起こり、その犯人探しや犯行方法が主題の一つのはずだが、どちらかというとこの異世界そのものがテーマなので、ミステリーとしては弱い。ちょうど、恩田陸のホラー系ミステリー『月の裏側』の世界に近いのだ。
何はともあれ、この『ネクロポリス』はミステリーという分類には入らず、ファンタジー系の作品だろう。そこを承知で読む分には充分楽しめる作品なのだ。