あの衝撃的な傑作『TENGU』を書いた作者の処女作。そして心温まる異色の冒険小説なのだ。
あの『TEDNGU』を読んでしまうと、どうしても比較して地味にも見えてしまうのだが、ま~それはいたし方がない。つまり、ミステリィとして読むと多少緊迫感や切迫感が弱いのだが、逆に悪人がまったく出てこない希有な冒険小説として読むと、非常に楽しめる。
関東の牛久沼で、釣り人が”河童”に食いちぎられるという事件が発生。地元警察の捜査は混迷し難航してしまった。そこで宿無しのルポライターと老猟師、地元の少年が、事件の謎を解くために活躍を始めたのだ。
心に傷を負った男たちの、力と知恵を集めたひと夏の冒険談。読後感も悪くなく、著者の生き物の扱いや自然への畏敬の念などには、共感を覚える。しかし、我輩はバス釣りをしたことがないので、もしかしたら釣りのテクニックの的確さや、バス釣り描写の醍醐味を、ほとんど理解できていないのかもしれない。その意味では、釣り好きやアウトドア派の読者なら、とても楽しめる冒険小説のはずだ。