なんと直木賞を受賞してしまったあの怪作「伊良部シリーズ」の第三弾。単なるアホでしかない奇人精神科医が主人公の、連作短編集である。それにしても今回の作品は問題作品なのだ。
人気プロ野球チームのオーナーで新聞社のワンマン会長が、パニック症候群に陥ったため、伊良部の病院を訪れる。しかし伊良部のいつもの奇行のおかげで、ますます事態は大騒ぎになっていく。という、露骨に読売のナベツネを皮肉ったお話「オーナー」
IT業界で企業買収を繰り返し、成り上がった若手社長。PC依存症が高じて、手書きで文字を書けなくなってしまった。伊良部と共に幼稚園でひらがなの練習を始めたのだが・・・。ホリエモンの行動そのまんまを描いた「アンポンマン」
中年女性の星・人気の美人女優「白木」は、若作りに走りすぎ、年齢に異常に反応するようになってしまった。伊良部の元を訪れた白木は、そこの看護婦に毒気を抜かれてしまうのだった。黒木瞳の若作りを皮肉った「カリスマ稼業」
離れ小島に一時的に赴任した伊良部は、そこの住民を二分する町長選挙に巻き込まれ、なんと引きこもりになってしまう。「町長選挙」
既にマンネリ化傾向が出てきてしまった伊良部シリーズが、反則技を連発!なんと著名人をネタにしたパロディ小説化してしまったのだ。最初の頃は、伊良部の極端な奇人変人ぶりが珍しかったので、なかなか楽しめた。しかし3冊目ともなると、さすがにこのキャラでも行動がパターン化されてくるので、意外性に乏しくなってくる。そこで、ハデな行動や奇行で有名な著名人に、伊良部をぶつけるという反則技を使ってきた。おかげで、主人公のはずの伊良部の出番は少なく、しかもまったく何の解決もみせず、ただのアホキャラになってしまった。ま~これはこれで、おもしろきゃ何でも良いのだが、ここまで著名人をコケにしても良いのだろうか?という疑問符も若干ある。それこそナベツネあたりに、訴えられかねないひどい書き様だ。おかげで、どこまでこの伊良部シリーズは暴走するのか、言わばそれが次回の楽しみになってしまった、トンデモ連作なのであった。