あさのあつこの大人気シリーズ『The MANZAI』」の第五巻である。あさのあつこは、『バッテリー』で一世風靡したが、我が輩としては、こちらのシリーズの方が、気に入っているのだ。
中学三年生の冬休み。小柄で内向的な瀬田歩と、大柄で明るい秋本貴史のコンビは、相変わらずボケとツッコミをしあいながら、最後の中学校生活を迎えていた。文化祭での「チーム・ロミジュリ」がウケて以来、人気者の二人と仲間たちは、初詣の最中に大騒動に巻き込まれ・・・。
あさのは、このシリーズで『バッテリー』と同じ世代の子供達を描いているのだが、『バッテリー』の常にピリピリと真剣勝負のような感性と大きく異なり、この作品ではホンワカとしたユーモア感覚が信条になっている。ポンポンと軽快で、掛け合い漫才のような会話に、すぐに助け合う仲間達。主人公の瀬戸歩は、不幸な過去のため繊細で内向的になっていたが、秋本貴史や仲間達との出会いにより次第に成長していくのだ。
『バッテリー』の主人公は、心を開かない孤高の天才だが、瀬戸歩は仲間なしでは一人では歩けない。野球の天才とシロート漫才。対照的な二人の中学生。あさのは、どちらに希望を見いだしているのだろうか。どちらに未来を託しているのだろうか・・・。
時代もあるのだろう。「スポ根」世代のあさのは、中学生なら当然「スポ根」でしょ、という想いがあったはず。しかし時代は移り「スポ根」は流行らない。やっぱり時代は「お笑いブーム」なのだ。そこはさすが、人気作家あさの。ブームにしっかり乗ってしまうフットワークは機敏だ。その時代の子供達に、しっかり届くスタイルを見つけるのが上手い。
歩くんたちも次は高校生。どんな進路を歩むのか。バラバラになるであろう仲間達とはどうなるのか。「ロミジュリ」コンビの行方は?まだまだ続くであろうこのシリーズに、今後も期待しているのであった。