何ともはや楽しいエッセーだ。ここ半年で浅田次郎の著書を多数読んできたが、どれもこれも非常に楽しめた。しかも、人情時代劇・痛快活劇・サスペンス・ギャグ満載の任侠もの・青春物語・等無節操なほどバラエティに富んでいた。
1994年から4年間、週間文春に連載されたエッセーは、まだまったくもって売れない無名の時代から始まり、やがて新人賞を受賞、さらに直木賞も受賞し売れっ子作家になっていく過程で書かれている。そのため作家の裏話的な話題が満載で、有名作品・話題のベストセラーがどのように書かれたのかがよく分かる。
ま~それにしても、この浅田次郎という作家はユニークだ。作家という人種はどのみち奇人変人の類が大半なのだろうが、この浅田次郎は自衛隊出身という経歴からしてかなりの変わり種なのだ。浪人して高卒のまま自衛隊に入隊し、怪しげな金融ブローカーを経て40歳を過ぎてから作家になったという人生経験が、バラエティに富んだ作品に繋がっているのだろう。
この「勇気凛凛」は、基本は露悪趣味の自虐ネタ満載お笑いエッセーなのだが、週刊誌に載せているのでタイムリーな話題も多い。オウム事件や沖縄米軍基地問題、血液製剤事件、山一証券の破綻などなど、重大事件への言及も多い。かつては日本人なら誰でも知っている話題なので、エッセーでは何の説明もなくいきなりその話題に入るのだが、ほんの十数年前に起きた出来事でさえ、今では思い出すのに苦労する事件ばかりだ。時代が過ぎ去るのがいかに早いかを痛感してしまった。
この連載エッセー集は、ハゲ・デブなどの自虐ネタ、事件や事故を扱う時事ネタ、そして創作活動の苦労や自身の過去の書いた作家生活ネタ、で構成されている。ま~エッセーなので何でもアリなのだが、さすがに最後の方は息切れがしてきて、マンネリ化になりそうだった。ここで打ち止めなのは致し方がないだろう。とにかくひたすら楽しい、いち押しエッセーなのであった。