今、話題の直木賞作家・桜庭一樹の作品である。相変わらず不思議な感覚の小説。北海道の旭川に住む、孤独で一風変わった美少女「七竈」を巡る物語なのだ。
奔放な母親のおかげで私生児として生まれた高校生の七竈。彼女は、町では知らぬもののない程有名な美少女だった。あまりに美しいのと出自のせいで、学校では孤立し、老いた祖父と狭い世界のなかで、ひっそりと二人暮らしをしていた。しかし世間は、美少女をほっといてはくれなかった・・・。
主人公が美少女のお話は多い。というか小説に登場する女性の大半は美女だろう。ま~これは作家の性別には関係なく、なぜかお決まりのようだ。しかも美女であろうと醜女であろうと、話の展開に大半は無関係。ということは読者サービスのつもりなのか。
しかし、このお話は違う。あまりに美しい顔(かんばせ)が故に、孤独でいることさえ許されない、一人の少女を巡るお話なのだ。
語り手が、奔放な母親、少女、飼い犬、母親の友人、腹違いの兄、元アイドル歌手のスカウト、と次々と入れ変わっていく。それにつれ七竈の周辺が次第に浮き彫りになっていく。飼い犬までが語り手になることがユニークだが、雪に閉ざされた狭い町で語るトーンはどれも等しく静謐だ。少女がその希有な美貌に振り回されながらも、幸運を掴めるかどうかは最後まで定かではない。因襲に絡み捕られた狭い町から抜け出すことで、わずかに希望が見える程度なのだ。
ま~いわば贅沢な悩みを抱えた少女のお話なのだが、奇妙な魅力を携えている小説。女性にとっては夢のような憧れの設定ではあるが、一歩間違えるとありふれたシンデレラストーリーになってしまう恐れもあった。しかし桜庭は、よくあるサクセスストーリーなどにせず、淡々とした語り口で、数奇な運命に身を委ねる母とその娘を描いている。不思議な読後感が残るお話であった。