2007年度「このミステリーがすごい!大賞」を受賞した、伊藤旬のデビュー作。言わば、金庫破りサスペンスの現代版なのだ。
技術の粋をつくしたIT研究所に侵入し、ミッションをクリアすれば1億円が手に入る、という一大イベントが開催されることになった。元IT企業の社員チームや、ひょんなことから紛れ込んだダイヤモンド強盗犯グループなどが参加を表明。生体認証や警備ロボットをはじめ、多数のセキュリティが設置された難攻不落の要塞を攻略するのはどのチームなのか、というお話。
セキュリティ・アタックという最も今日的なテーマを、豊富な知識でスリリングに読ませる力作だ。肝心のアタックまでの導入部が長いとか、他のチームの描き方が中途半端だ、とかいう弱点はあるが、セキュリティに対するアイデアが豊富でなかなか良い。血生臭いシーンもほとんど無く、スマートな印象もある。ある程度ご都合主義的な展開になることは、この手の小説では仕方が無い。構成を複雑にして先が読めない展開にしているので、若干読みづらいが、デビュー作ということなので、この豊富なアイデアを生かした次回作に期待が持てる有望な作家であった。