いや~なかなかビックリするような内容の本である。いままでにもオタク系の新書はかなり読んできたので、マンガやアニメに関して比較的詳しいと自負してきた。また、以前「かわいい論」なども読み、欧州ではかなり日本製アニメがもてはやされ、「カワイイ」が世界的な言葉として普及していることの認識もあった。しかし、現在の世界の実体はそんなレベルをはるかに凌駕しているのだ。「アニメ」とは日本製アニメーションを示す世界共通語であり、スペインでは数万人を動員するアニメイベントが年に3回もある。毎年パリで開催される「ジャパンエキスポ」に至っては、昨年は何と14万人も動員したそうである。欧州だけのブームではなく、中国・韓国はもちろん、ミャンマーやベトナム、カンボジアなどのアジア各地まで、アニメの認知度は著しいのだそうだ。それにしても、あの超保守国であるサウジアラビアでさえ、ベールに隠れた女性の間では、「ONE PIECE」「NARUTO」「BLEACH」「鋼の錬金術師」のファンが多数存在する、というのだから驚くしかない。
最近NHKが、毎週土曜の夜に「東京カワイイTV」という番組を放送している。内容はアニメではなく、「かわいい」がキーワードのファッション中心の番組。世界で「なんちゃって制服」や「ゴスロリ」が流行っていて、原宿が世界の中心地!みたいな話が多い。面白いというか興味深いので、毎回チェックしているのだが、ロシアにまで「かわいい」が知られているのだそうだ。これらの現象もアニメが大きな影響を与えているのは間違いない。
それにしても、これほど日本製アニメが世界を席巻しているとは知らなかった。なので普段は腰の重い外務省までが、アニメを日本の外交ツールとして有効利用しようとまで考えたようだ。ところが今、ちょうど今年度予算に入った「アニメの殿堂」構築費用117億円が無駄使いだと一部議員から批判を受けている。せっかく世界に誇れるアニメ文化を、世界に向けて発信しようとする施設に対して、このような事情も知らない輩が非難する資格はない。景気対策と称して多額のバラマキ予算の中にいつの間にか紛れ込ませたやり方は誉められたものではない。しかしま~こんな時でもないと文化行政に予算が付くわけがないのだから、ドサクサに紛れて予算を組んだ担当者の手腕は大したもんである。
とにかくだ、この新書の出来は置いといて、内容は注目すべきである。著者が世界各国を巡って、アニメ大使として講演をしたのは、昨年の事。まだホットな情報なのだ。新書が、ほとんど雑誌のように素早く出版される事は珍しくないが、外務省が大使を巻き込んでアニメ普及に積極的に動いている事実は画期的だ。それにしてもマンガ好きだと公言する首相が出現したことが、潮目を変えたのだろう。いろいろとバカにされることが多い麻生首相だが、唯一このアニメを巡る環境を変えたことは、歴史的快挙と評価すべきである。将来の日本は、コンテンツが文化的にも経済的にも牽引役となる可能性を秘めているのだ。この新書は、この事実を世間広く知らしめるパワーを持っている。