アメリカの金融バブルを崩壊させ、世界経済をそれこそ100年に一度の未曾有の危機に陥れた元凶は、ウォール街の強欲主義者達だ。と喝破した本である。著者は、ニューヨークに駐在している元ゴールドマンサックス社員。現役の投資銀行家であり、25年もの間ウォール街の浮沈を見てきたので、非常に説得力がある本である。
「今日の儲けは僕のもの、明日の損は君のも」という輩しかいないウォール街。結局会社とは、売り買いして儲けるための道具でしかない、という強欲主義者がバッコする街に、世界経済は牛耳られていたようだ。おかげで、数億ドルを稼いだ投資銀行の経営者達は勝ち逃げし、大損した穴埋めを税金で補填するパターンは、かつてのバブル破綻後の日本経済と同じだ。違うのは、その規模が桁違いに大きいことだ。
この本に登場するアメリカの金融関係者は、どれもこれも人間としての良識を持ち合わせていない。本来金融業は、製造業などの実業を裏から支えることが業務のはずだった。それがいつのまにか、金融技術だけで儲けることを覚えたため、実業を疎かにしてしまった。言われみれば当たり前の話なのだが、バブルの時代には誰もが忘れていた。日本も例外ではない。「会社は資本家のものだ。法律にもそう書いてある。」と言い切っていた投資会社の社長が、もてはやされていた時代が日本にもあった。「金儲けして何が悪い」と言って逮捕されたIT企業の社長もいたので、日本人も偉そうなことは言えないのだ。しかしそんな連中は日本ではすぐに消えた。大半の日本人は、金で金を儲けるやり方には胡散臭さを感じていたのだろう。やはり物造りがが仕事の原点だ、という思いの方が強いはず。それがグローバル化という名の下に、世界中がウォール街ルールを受け入れたが為に、今回の金融危機が生じたのだ。
それにしても、今回の金融危機が一旦収束したとしても、人間はまた何十年か後には同じことを繰り返すのだろう。日本のバブルが弾けた後、絶好調となったアメリカで、グリーンスパン議長は、日本のバブル経済をじっくり研究したので、同じバカなことはアメリカでは起きえない、と発言していたのを覚えている。当時、神のように崇められていた議長の言葉だったので、日本人までがその言葉を信じていた。それがこのていたらくだ。やはりバブルは弾けてみないと、誰も気が付かないようだ。
人の欲望とは、際限が無いようだ。このことを忘れ、社会のシステムの善意を信じすぎると、しっぺ返しをくらうのだ。神の手だけを頼りに、資本主義を信奉することの代償はあまりに高すぎることを理解するのには良い本である。