なかなか怖い小説である。重いテーマを軽いタッチで描くのを得意とする、人気の伊坂幸太郎だが、いつにも増して重い話なのだ。
舞台はお馴染み地元仙台。8年後に小惑星が衝突して地球は全滅すると公表され、世界中で暴動や大混乱が生じた5年後の世界。奇妙に世の中が落ち着いてきた、そんな世界で生き残った人々は、それぞれの暮らしを何とか安定させようとしていたが・・・。
映画にもなった「死に神の精度」もそうなのだが、伊坂は死ぬことが分かってしまった人のお話が多い。人の生きざまは、その直接的な死と対比することで、くっきりと際だたせることができる。そのため小説ではよく使われている手法だ。半年後に死ぬと宣告されたガン患者の話とか、最初に主人公が死ぬシーンから入り、時間を遡ってその人の半生が語られる話とか、よくあるパターンだ。
これがSFだと、核兵器やウイルスや小惑星の衝突やらで、人類の大半が死に絶えた後の物語となり、終末物というジャンルができるくらいその手の話は大量にある。たいていそのような舞台では、生き残った少数の人間が、死の恐怖に怯えながらも、何とか生き延びようと奮闘する姿を描いている。もしくは、いきなり日本から東京だけが無くなったら「首都消失」とか、ある日突然人間の99%が消失したら「渚にて」とか、理由は不明でも何でもよく、ある仮定を設定してその場合社会はどうなるか、みたいな「思弁小説」とでも言うパターンもある。ま~このジャンルは、SF黄金期の小松左京が得意としていた分野だ。
この「終末のフール」も、若干そんな観点も見受けられるが、伊坂はあくまで市井の人々の細々とした日常風景から、異常な世界と人の生きざまを描いているのだ。