ひきこもり探偵シリーズでデビューした坂木司の新シリーズである。(もっとも新シリーズであるかどうかは、次作が出来ないと分からない)
かなりマイナーな作家だとは思うのだが、印象的な連作集だったため、さっそく買ってしまった。前シリーズの「青空の卵」「仔羊の巣」「動物園の鳥」の3部作は、ミステリー度は低いのだが、登場人物がよく泣くという、かなりユニークな青春ミステリーだった。社会的にひきこもり状態にある青年がいわゆる「安楽椅子探偵」なのだが、彼の親友が何とかひきこもり状態から、連れ出そうと奮闘する、というお話だった。
この「切れない糸」も、坂木らしく人々の善意や温かさを全面に押し出した作品になっている。
東京下町商店街育ちの新井は、大学卒業間近になっても、なかなか就職先が決まらず、焦っていた。ところが父親が突然倒れたため、家業のクリーニング店を引き継ぐことになってしまった。ところが、このクリーニング店に持ち込まれる衣類から、思わぬ謎が生まれ、喫茶店で働く友人の沢田が解決していくことになる。
いわゆる「日常の謎」系のミステリィで、決して殺人事件は出てこない。また、ミステリィと言っても、謎を持ち込まれて解決するタイプでもなく、ちょっとした疑問点を解決していくだけなので、大半の読者でも途中で分かってしまうレベルだ。この著者の場合、主眼はあくまでも人の善意を描くことなので、謎の方はどうしても、無理にとってつけたような感じになる。こんな簡単なことを、どうして悩むんだというのも多々ある。ま~しかし、坂木の愛読者たるものは、そんなことは期待していないはず。ひたすら性善説を信じ、ハッピーエンドの大団円だけを楽しみに読んでいるのだから・・・。