林真理子の小説を読んだのは、何十年ぶりだっただろうか。いくつか短編を読んだ気もするのだが、具体的に覚えてないので、もしかしたら初めてだったのかもしれない。「吉川英治文学賞」を受賞した連作短編集ということなので、たまには恋愛ものでも読むかと思い、手に取ってしまった。
人妻が不倫し、その夫が浮気し、相手の女性が売春し、買った男の娘が浮気相手になる。短編の主人公の相手が、次の短編の主役となり、次々と主役が移っていく。そんなトリッキーな構成になっている連作集である。
浮気している男は、妻にはバレるはずはないと信じこみ、妻はそんな夫を見限ってしまう。何かを隠して生きている、夫・妻・娘そして愛人たち。愚かな人間たちの行為を描き、ささやかな秘め事と、その切なさを紡ぎだした小説だ。読み始めは浮気と不倫の連鎖ばかりなのであきれていたが、様々なパターンに展開し、人間の欲深さに気づかされる。