2009年の「直木賞」受賞作だそうである。久しぶりに旬な単行本を読んでしまった。
我が輩の場合、自分で選んで購入した文庫しか読まないというポリシーがある。ま~ポリシーと言っても、通勤時間にしか本を読む時間がないので、単行本だと重く不便だという程度の理由なのだが・・・。今回は、たまたま知り合いが貸してくれたので、久しぶりに単行本で読んだのであった。
ところで肝心の作品なのだが、ある夫婦の20年間の物語である。夫婦の物語と言っても100%夫の視点で語られ、妻は夫からみると理解不能な謎の生き物としか描かれていない。夫は結婚してからは、理解できない妻を避け、浮気と仕事に逃げ込み、家庭を省みなくなった仕事人間。最後に娘が家から居なくなってから、やっと家庭というものの存在に気がつくというのがオチだった。
まったく何の予備知識もなく、いきなり読み始めたのだが、1時間程度で読める短編だ。冒頭は夢か現実か分からないような幻想的な描写もあるが、それも最初だけ。高度経済成長を担ってきた、典型的とも言えるサラリーマンの孤独な生き方を淡々と描いている。娘がいても、夫婦では11年間会話をまったくしないとか、浮気症の夫だとかは、小説でも現実でもそれほど珍しくもないパターンだ。妻というか女性を理解不能の生き物としか見えないのも、男ならフツーというか当たり前だと思うのだが、そうでもないか・・・。

どうもこの小説の面白味というか、どうして賞を受賞できたのかが、我残念ながら我が輩にはほとんど理解できなかった。また、冒頭の幻想的な風景は、なにを暗喩していたのだろうか。
面白いから一気に読んだのではなく、淡々とした描写なので、そのまま最後まで読んでしまったのという感じだった。
主人公の男の心情はフツーに理解できるのだが、共感することはできないだろう。まして読者が女性だったら、決して主人公の男の行動は反発されるはず。もしかしたら作者は、高度経済成長の元で走り続けてきた典型的サラリーマンの、行き着く先にある終着点を描きたかったのだろうか。人も仕事も家族とさえ心が通わず、徹底的に孤独な現代人。それではあまりに絶望的な風景ではないのだろうか。