「あの」舞城王太郎なのだ。『煙か土か食い物』でメフィスト賞を受賞し、衝撃のデビュー。疾走感あふれる特異な文体を駆使し、常に文壇に騒動を巻き起こす、今もっとも注目されている作家の一人だ。2009年度の「大学読書人大賞」を受賞した作品でもある。
この作品は、タイトルからも分かるようにベタベタのラブストーリー。『世界の中心で愛を叫ぶ』へのオマージュだとか、パロディだとか、いろいろと言われている。我が輩は恋愛物は苦手なので、「セカチュー」などというベストセラーは、恥ずかしくてとても読めないが、この小説は舞城作品ということもあり、芥川賞候補として何度目かの推薦に取り上げられ、結局は落選した話題の作品ということもあり、とりあえず読んでみたのだった。
「愛は祈りだ。僕は祈る。僕の好きな人たちには皆そろって幸せになってほしい。」恋人が、長い闘病生活の末、死に至るまでの間、付きっきりで看病していた、ある若者。作家である彼は、彼女を愛しているのに救えない苦しみに苛まれていた。彼女の死後、彼女の弟たちとの付き合いもうまく行かなくなるが・・・。という、「恋愛」と「小説」をめぐる「恋愛小説」なのだ。
舞城の作品を粗筋で紹介するのには無理がある。基調となるのはこのような話だが、異なる短編やエピソードがいくつも挿入され、読者は惑わされる。それよりも何よりも、舞城の特異な文体が、感情を揺さぶる。
舞城王太郎は、デビュー作から衝撃的だった。ノンストップ・アクション劇を観ているような畳みかけるテンポの文体。若者言葉オンパレードの会話。文学とはかけ離れたエンターテイメント小説に一見見えるのだが、最も先鋭的な純文学とも読める。文壇とは無縁のフリをしてるが、発表の場は「ユリイカ」などの文芸誌だ。「大学読書人大賞」をとるほど、本マニアの大学生に圧倒的に支持されている。
この『好き好き・・』は、人称を今までの「俺」から「僕」に変え、スピード感を若干ゆるめているので、他の作品よりは文学的な香りがするようになった。なので、芥川賞の候補にもなったのだろうが、超保守的な選考委員達が過激な作品を選ぶはずもなく、予想通り選に漏れてしまった。ま~いたし方が無いのだが。
ラブストーリーとはいえ、万人にお薦めはできないが、ありきたりの恋愛小説では飽き足りない人には、いかがでしょうか。