北村薫の新キャラクター「名探偵」かんなぎ弓彦が活躍するミステリィ短編集。
不動産屋の事務職の女の子が主人公。その不動産屋の二階に事務所を構えた男は、真実が見えてしまうという自称名探偵だった。普段はアルバイトをして生計を建て、めったに遭遇しない難事件を待っていたのだ。記録者として名乗りを挙げた「私」は、三つの悲しい事件に出会ってしまう。
設定だけ聞くと、なんだかお手軽なミステリィだったので、あまり手が出なかったのだが、そこは名手の北村薫。ほとんどユーモア小説の形態をとりながらも、最後はしっかりとした重みのあるお話に仕上げている。
いわゆる「名探偵」の存在を、否定するかのようなキャラの探偵を創りながら、お話が進むにつれ、話を聞くだけで真実を見極めてしまう典型的な「安楽椅子探偵」に変貌させる展開は珍しい。最初は日常の謎の短編が二つあり、お気楽ミステリィと思わせておいて三番目は突如殺人事件のある中編という構成。