荻原浩の2001年の作品。1997年に『オロロ畑でつかまえて』で「小説すばる新人賞」を受賞し、デビューを果たした荻原だが、この作品は5作目に当たる初期の頃の作品。健全なユーモア作品でデビューした後、初期の頃はこの系統のユーモア作品が多く、『誘拐ラプソディ」も、その一連の流れにあるようだ。
借金と前科だけしか持っていないダメ人間の伊達秀吉。自殺も出来ず、金持ちのガキと思われた・伝助と偶然に出会い、「人生一発逆転のチャンス」とばかりに張り切ったものの、誘拐に成功はなし。警察はおろか、ヤクザやチャイニーズマフィアにまで追われる羽目に。しかも伝助との間に友情まで芽生えてしまうのだった。
この「誘拐ラプソディ」は、デビュー来のユーモア系統に属しており、二作目の「なかよし小鳩組」で扱ったヤクザネタを今回も使っている。ま~ヤクザネタは、ユーモア作品では定番で、古くは小林信彦の「唐獅子シリーズ」、最近では浅田次郎のロングセラー「プリズンホテル」シリーズが有名だ。
この「誘拐・・」は、荻原作品の良い部分のエッセンスが詰め込まれており、ユーモアはもちろん、ホロリとさせる人情話や、先が読めないドタバタ展開など、読者サービス満点の作品となっている。ダメダメ人間の「伊達秀吉」という名前負けする主人公が、ヤクザの息子「伝助」と行動を共にするにつれて、次第にまともな人間になっていく姿も微笑ましい。エグイギャグは、あまり我輩の趣味ではないのだが、『母恋旅烏』ほど泣きを強要せずに、純粋にドタバタ・エンターテーメントとして楽しめることができた。