大学生の斎木は、父の訃報で故郷に帰ると、中学時代に好きだった川村麗子の妹と出会う。妹から麗子の事故死を聞き、どうしても納得のできない二人は麗子の同級生たちを訪ね、調べることにした。斎木の探り当てた会った真実とは・・・。
この樋口有介という作家は、この「風少女」で初めて出会った。直木賞の候補にもあがったこの長編は、典型的な青春ミステリィであり、瑞々しい感性で青春の痛ましさを描いている。
何せ会話が良い。クールで皮肉屋の大学生が主人公なのだが、夫と死に別れた母親・出戻りの姉・中学生の妹と、女だらけの家族とのテンポよい会話。やたら元気な女子高生との言葉の応酬。元不良仲間との無愛想な会話。主人公が、いささか老成している感もあるのだが、会話によって若者たちのキャラクターを際だたせている。
この計算された会話と言えば、ハードボイルド系のミステリィが最初に思いつく。本場アメリカのではなく、あくまで日本のなのだが、極端に言葉の少ない会話は、クールに決めてくれる。「私が殺した少女」の原尞。「リンゴオ・キッドの休日」の矢作俊彦。などが我が輩お気に入り。ま~それ以外になると、ジャンルがまったく異なってしまうが、あさのあつこのベストセラー「THE MANZAI」シリーズ。このYAものは、中高校生向けらしくほとんど会話だけの世界。いかにも中学生らしいテンポのよい会話が、大半を占めているのだ。
それに比べると、この「風少女」は会話の量が多いわけではないのだが、主人公が世代の異なる人物とする会話のセンスが、なかなか良いのだ。
本筋とは関係のない感想だが、やはりミステリィとはいえ、小説はこういったディティールの積み重ねが読んだ際の印象を決めると思う。肝心の謎の部分は、いわゆる「意外な犯人」ものなのだが、動機や背景に今時の時代感覚が盛り込まれ新鮮な印象が残った。