日本SF界の期待の星、機本伸司の新作なのだ。この作品は、小松左京賞を受賞した『神様のパズル』の続編にあたり、語り手の綿貫とヒロインの沙羅華の凸凹コンビが活躍するお話である。
やっと就職ができた綿貫は、ピグマリオンという怪しげな会社から、資産家の子供たちの失踪事件を、知り合いの天才美少女・沙羅華に依頼するよう頼まれてしまう。天才物理学者から普通の女の子に戻りたかったはずの沙羅華は、なぜか自分からその調査の為に渡米してしまう。沙羅華を連れ戻すため、綿貫まで渡米するが・・・。
前作で「宇宙を創ってしまった」沙羅華が、今度は自分探しのための「内宇宙」を創ろうとする。「内宇宙」といっても、昔SFの世界で流行ったものではなく、脳科学を用いて物理的な精神改造を施そうというのだ。 今まで機本伸司は、『メシアの処方箋』、『僕たちの終末』など、ハードSFに近い設定とストーリーを、軽めのユニークなキャラクターを駆使し、とにかく知的かつ楽しめるSFを提供してくれた。しかし今回の『パズルの軌跡』は、どちらかというとキャラクター小説に近く、登場人物の魅了に負うところが大きい。要するに、ハードSFとしてのアイデアに乏しいのだ。沙羅華の出自に関わる謎や葛藤がメインとなり、先駆的アイデアはあまりないのが残念。ま~そうは言っても、「自分とは何か?」というテーマに対する作者なりの回答があり、そこは感心させられたのだった。ということで、結局この作品はSF的味付けのあるキャラクター小説なのだ。