大ベストセラーなので、なかなか手が出なかった。売れていたのはもちろん知っていたのだが、医療系のミステリィでしかも外科系だと、血を見るのは明らかなので、どうもあまり気が乗らなかったのだ。ま~そうは言っても食わず嫌いなのも何なので、遅蒔きながら今頃になって手に取った次第なのである。
「チーム・バチスタ」は、栄光に包まれた心臓手術の天才外科チームだった。ところが原因不明の連続術中死が発生。病院長は、万年ヒラ講師の田口医師に調査を依頼する。医療過誤か殺人か。調査を進めるにつれ、意外な事実が明らかになってくる。
やっぱりというか、さすがベストセラーだけあって、これが非常に面白い。医学用語のオンパレードだが、読みづらくはない。特異なキャラクターの探偵役に、気のいいワトスン役は定番だが、その他の登場人物もキャラが立っており、なかなかの配役だ。とても著者のデビュー作とは思えないレベルだった。
手術中という衆人環視の状況下での殺人事件、というユニークな設定。ストーリーも先の読めない展開が続き、ラストの大団円は想像以上に素敵で、読後感が良かった。この作品のようなお話で、後味が良いのは希有な方で、最近はインパクトを求めてか、苦い結末になる場合が多いのだ。
我が輩としては、かなり久しぶりに医学畑の小説を読んだのだが、かつて一世を風靡したマイクルクライトン以来かもしれない。「ターミナルマン」「アンドロメダ病原体」など、医学博士の資格を持つSF界の巨人が放った初期の一連のSFは、それまでのSFとは次元が異なり、衝撃的でさえあった。それ以降も「ジュラシック・パーク」など目覚ましい活躍は周知の事実だ。
それにしても著者が現役の医者だけあって、大学病院の実状がリアルに描かれている。医療制度における問題の深刻さは、現場の医師だからこそ、切迫感が伝わってくる。やはり現場出身でないと、そのリアル感は書けないのかもしれない。しかし文才まで同時に持ち合わせしている人は、希有な存在なのだろう。その意味では、この海堂尊は、その貴重な才能の持ち主なのだ。