「血みどろの手術小説」とでも言うべき医学小説である。大人気の海堂尊だが、このシリーズの世界観は、桜宮という架空の地方都市の東城大学病院で舞台が統一されている。その中でもこの「ブラックペアン」は、年代的に初期の頃に位置づけされ、後の時代の「チームバチスタの栄光」に登場する、佐伯病院長の若い頃のエピソードが語られている。
東城大学病院に「スナイプAZ1988」という、食道癌手術の新兵器を引っさげて、若手の外科医・高階講師が入局してくる。その新兵器の普及に全力を注ぐ高階は、非常に困難な食道癌手術を何例も成功させ、その実力を示すが、・・・。
ま~とにかく全編が、血なまぐさい外科手術のオンパレード。血に弱い我が輩としては、苦手な小説なのだ。いくら大人気のシリーズと分かっていても、我が輩がこの医学小説シリーズに、なかなか手を出さなかった理由の一つが、実はここにある。このような血だらけの手術シーンの話が多そうだと直感していたのだ。
しかしやっと最近になり、処女作「チームバチスタの栄光」を読んだのだが、手術シーンはあったものの、そればかりでもなかったので結構楽しめた。
だが、今回の「ブラックペアン」は、テーマが外科手術の手法にまつわる話なので、必然的に手術の場面ばかりとなる。一歩間違えるとグロな話にもなりかねないが、あくまで医学小説なので、そんな雰囲気にはまったくなっていないのが救いなのだ。
とにかく手術シーンを除くと、いつもの海堂節である。新人外科医・世良を主人公にし、その成長を描くスタイルとなっている。当然、いつものように大学病院内での権力闘争があり、陰謀・駆け引き・裏切りの展開となる。ま~そのような病院実態を描きながらも、医師の資質のあり方や、癌の告知方法、外科手術における新手法の問題点も投げかけている。
実際、よく目配りができているお話なのだ。逆に言うとミステリィではない。ミステリィを期待すると肩すかしとなるが、最初から医学小説として読むと期待通りの「海堂小説」となる。「チームバチスタの栄光」で活躍する面々の、若かりし頃が描かれているので、ファンにはたまらないはずだ。
いかんせん、この海堂シリーズを一度読み始めると、止められない♪止まらない♪のだ。例え多少趣味が合わなくとも、読むしかないのだった。それにしてもこの400ページもない薄い本を、さらに薄くスライスして、上下2分冊にするのは止めてもらいたいもんだ。ところでこのペアンて、何だろう?