いや~なかなか知的興奮を味わえる、これも話題の日本人論なのである。
いわゆる日本人論の原点ルース・ベネディクト「菊と刀」、大ブームを起こしたイザヤ・ベンダサン「日本人とユダヤ人」、数学者・藤原正彦が書いた「国家の品格」、最近話題になった「日本語教のすすめ」も、卓越した日本語論であり、同時に優れた日本人論だった。連綿と連なる、それこそ星の数ほどある「日本人論」の中でも、この「日本辺境論」は、ユニークさや着眼点で、トップクラスのレベルだと思う。
もっとも著者はこの本の冒頭で、ここで語られていることは、それこそ半世紀前から論じられたことばかりであり、特に新味があるわけではない、と言い訳している。また、日本人は既に議論が終わった事を、それを知らずか何度も同じ議論しているようにも思える、とも言っていた。ようするに忘れっぽいのか、せっかくの知的財産を共有してこなかった、と言っているのだ。
ま~少なくとも我が輩は、今までこのような切り口の日本人論を読んだことはなかったので、単に教養が無いだけなのだが・・・。
とにかく、この本の趣旨は次のようにまとめられる。
「日本文化というのはどこかに原点や粗型があるわけではなく、『日本文化とは何か』というエンドレスの問いの形でしか存在しない」「つまり制度や文物そのものに意味があるのではなく、それがより新しいものに取って代わられる変化の仕方に意味がある」と述べている。もっと露骨に言うと、「日本人とは常にどこかに『世界の中心』を必要とする、辺境の民なのだ」と。
鋭い!被虐的だが納得感がある。ここでこの文章だけ取り出しても、納得感がないかもしれないが、この本では様々な例を挙げて論証しているので、ぜひ読んでもらいたい。

それにしても、名言というかま~傾聴に値するユニークな意見が多い。
「日本人は辺境人であり、他国との比較でしか自国を語れない。しかし辺境人の「学び」は効率が非常に良く、それが生存競争を勝ち抜いてきた秘訣だ。」
う~ん、確かに。日本人は昔から舶来物を珍重してきたしな。
「日本は諸国の範となるような国になってはならない。なぜなら諸国の範となるような国は、すでに日本ではないからだ。」
これは逆説か、それともとんでもない皮肉か?
「日本語の漢字とひらがなの混ぜがき文化は、「絵」と「ふきだし」で構成されるマンガ文化を生んだ。」
なるほど。
「人が妙に断定的ですっきりした政治的意見を言い出したら、眉につばを付けて聞いたほうがいい。なぜなら人間が過剰に断定的になるのは、たいていの場合、他人の意見を受け売りしているときだから。」ようするに「自分の頭で考えて出した結論なら、その固有の経験や生活実感の厚みから、めったにすっきりした結論にはならないはず」
と、断定してるし。
これ以外にも面白い話が多々あるのだが、全部抜書きするわけにもいかない。いやいや、それにしても久しぶりに「大風呂敷を広げた」日本人論を読んだものだ。確かにこのような切り口で日本人を見ると、いろいろと納得させられることが多い。
SNSの会員の中には、民族主義的意見・国粋主義的意見を持つ人が多いように見受けられるが、そんな人たちにこそ、この本を読んでもらいたい。如何に自分達の意見が、他国を物差しにしか考えられていないかが、理解できると思うのだが。