今、注目されている道尾秀介の本格ミステリ大賞受賞品。
母を癌で亡くした小学生の鳳介は、父と二人暮らしを始めた。ところが、わずかその数日後、幼なじみの亜紀の母親が自殺してしまい、亜紀までが交通事故に遭う。そして鳳介は、父の異常に気づき・・・。
いわゆる名探偵は登場しない。利発な小学生が、異常な状況に巻き込まれる中で、なんとか打開しようと奮闘する物語だ。ま~予想通り、「意外な展開と驚愕の真相」となる。
なんか久しぶりにミステリィらしいミステリィを読んだ。名探偵は登場しないので、典型的というわけでもないのだが、登場人物に精神障害者がいるパターンはサイコ系の定番。しかし語り手が順に変わっていく構成も、仕掛けの一部になっていて面白い。
精神病院を舞台にしているので、異常者が多数登場しても不自然さは少ないのだが、それでもちょっと多すぎるかな。ま~最後の仕掛けは、結構意外で面白いのだが。
それにしても、著者は精神医学にかなり詳しいようで、その筆力も確かだ。しかし意外なことに、ミステリィ指向ではなく、人を描く手段としてミステリィを選んだそうだ。確かに小学生の男の子や女の子の心理描写は、繊細で良く練られており、事件前と後での成長度合いも上手い。でもストーリーそのものは、陰惨な事件であり、最後は救いがあるだけ良いのだが、決して爽やかな作品と言うわけではない。ミステリィに爽やかさを求めてもしかたがないのだが、最近は「日常の謎」系の作品ばかり読んでいたので、あまり暗い話は趣味ではなくなったのだった。