いわゆる業界ものである。TV業界という華やかな業界の内幕を、タイトルの印象と異なり、いたって真っ当に告白した新書なのだ。
著者は、業界の裏事情まで知り尽くしている経歴20年のベテランディレクター。知られているようで、あまり実態が知られていない、巨大なTV業界の問題点を、様々な観点から指摘している。
主な内容としては、次のとおり。
①制作現場での格差問題
キー局の正社員と下請け制作会社では、給与に数倍の格差があるという話。
②やらせ、パクリ、捏造問題
「あるある大辞典」で有名になった、番組のデータ捏造や、やらせの問題。
③視聴率問題
5%以上の誤差がでる視聴率調査にもかかわらず、数字が1%上下するだけで番組評価が変わってしまうTV業界特有の問題。
④報道と制作費
TV局としての使命である報道が、最もコストがかかるというお話。
⑤スポンサー対策
スポンサーが番組内容に介入してくる問題
⑥TVショッピングと倫理規定
番組かCMか、境界が曖昧なTVショッピング。
⑦デジタル放送と将来性
投資負担が巨額なデジタル放送と、広告費収入の大幅ダウンによる赤字経営問題

以前からいろいろと話題になった問題やTV業界の構造問題など、大小様々な問題を取り上げている。が、ま~あらためて並べてみると、視聴率のようなTV業界特有の話もあるが、いずこの業界も同じという問題も多い。
つまり、①の番組制作における下請け丸投げのような業務構造は、建設業では有名だし、製造業でも一般的だ。我が輩のいるソフトウェア業界においても露骨で、酷くなると孫請けどころか六次請け、なんていうのも聞いたことがある。
ちょいと脇道に逸れるのだが、どこの業界でもよくある話、となると日本の現在の「格差問題」は、このようなピラミッド構造でできた業務分担構造が、根本にありそうだ。
TV制作現場ように、全く同じ仕事で給与格差が数倍という現場は少ないと思いたいが、どの業界でも構造が同じなら永遠に「格差問題」は無くならないではないか。
成果主義とか言っても、それはあくまでピラミッド構造における、自分の所属する階層の中だけでの話。階層と階層の間という構造は、すでに固定化されているのだ。一度派遣社員になってしまうと、大半は永遠に派遣社員から抜け出せないのが実態だ。
話を戻すと、⑦のTV局の赤字問題は、「FREE」の際にも書いたが、広告費がインターネット業界に流れたためによる構造的な問題だ。したがって、例え好景気になってもまたかつてのようにTV業界だけが広告費で潤うようになるとも思えない。TV業界にとっては結構深刻な問題だろう。今までTVのキー局は、免許制といういわば保護された独占企業だったので我が世の春を謳歌できていた。しかし今後は、Netでの動画配信やWeb広告という武器を持つインターネット業界と戦うことになる。
そういえば(また脇道に逸れるが)、このデジタル放送の、そもそもの発端は、電波という限られた資源を、アナログ放送に使用していたTV業界から取り上げ、逼迫した携帯向け電波に再割り当てようという話だった。つまり国は、放送業界から通信業界へ、力点を移しているともいえるのだ。この観点だと、TV業界が沈下してNet業界が浮上するのは当たり前の話だろう。
TVの裏話からは、かなりはずれた感想ばかりになってしまったが、ま~部外者からTV業界を眺めてみるのも、面白い。というか、どんな業界も激変にさらされているもんだ、というのが正直な感想であった。