2010年NHKのTVドラマにもなった「君たちに明日はない」の続編である。この山本周五郎賞を受賞した作品は、リストラ請負会社という架空の仕事で働く若者・真介を主人公にした連作短編集だ。
会社にとって不要とされた社員の首切りを、人事部の代わりに代行する、というヤクザな仕事している人物が主人公。退職・転職は、サラリーマンなら人生の転機とも言える重大事なので、様々な人間ドラマが生まれる。
業績不振の生保社員、デパートの外商、サラ金の営業、旅館の従業員たちと面接を繰り返し、自主退職を促す。真介は、そんな人から恨みを買うような仕事を請け負う会社に勤めていたのだった・・・。
しかし「借金取りの王子」とは酷いタイトルだ。ま~前作の「君たちに明日はない」というタイトルも似たようなレベルだが、タイトルのイメージと異なり、意外にも感動的な小説なのだ。サラ金に勤務する営業が、ノルマに追われてすさんだ生活を送っていても、退職勧告を受けても、純な恋愛を貫き通す姿には心を動かされるのだ。背景として、前作で出会った八歳年上の恋人・陽子との恋路が、描かれる。
この連作短編集の大きな特徴は、登場する業界の裏事情が、詳しく描かれているところにある。サラリーマンは、自分の所属する業界以外のことを、意外と知らないもんだ。サラ金業界の内情なんぞ、カタギのサラリーマンなら普通は知らない。なので、様々な業界事情をのぞけることが、この小説を興味深く読ませてくれるのだ。前作よりさらに面白くなった、サラリーマンにお勧めの小説なのであった。