2009年本屋大賞受賞の話題作が、早くも文庫になった。これは読まねばならぬということで、早速読んでみたのだった。これがメッポウ面白い。噂に違わず衝撃ラストで、確かにこれではいろいろと物議を醸すのは致し方がないのだ。
「娘はこのクラスの生徒に殺されました」と、女性教師の衝撃の告白で、この物語は幕を開ける。そして告白は、級友・犯人の家族・犯人と続き、衝撃のラストになだれ込む・・・。
ま~決して読後感のよい話ではないのだが、とにかく面白い。ドンドン読んでしまうのだ。冒頭から、女教師がクラスルームで退任の挨拶を、延々と語るシーンから始まる。これが、教室で聞いている気分になるほどの臨場感がある。この最初の「告白」の章だけで、出来の良いミステリー短編になっている。読んでいてこの本は短編集かな、と思ったほどだ。しかし次章からは語り手が移り、事件の告白がさらに続くのだ。
モノローグだけで構成されるミステリーなら、恩田陸が最も得意とする分野だろう。「黒と茶の幻想]や「木曜組曲」など傑作が数多い。一つの事件を複数の話者が順に語ることで、別な事件が浮かび上がってくる、といった趣向や、誰かの告白に嘘を入れ、読者を混乱させることもあった。
この「告白」という小説の場合は、一つの事件を巡る真相の告白というパターンではなく、事件がさらに進んでいくところがユニークで、意外性が高いのだ。
また、さすが女性作家だけあって、女性心理の描写がやたらリアルに感じ、不気味だ。逆に男の告白は子供だけしかなく、その内容も現実感は薄いように思える。ま~登場人物達は、みな性格が極端にデフォルメされており、だからこそ事件が起こるわけだが、そのある意味無茶な行動の理由を、独白という形式で説得力を持たせた小説とも言える。
う~む、上手いな・・・。もしこれが独白でなく、普通の客観的描写だったら、なんだが現実味が乏しい荒唐無稽な話になったかもしれない。
そういえば、ミステリーの大半はどうやって犯行を犯したのかHAW、誰が犯人なのかWHO、が大半で、その犯行動機WHOYは、ほとんどおまけのような扱いが多い。ま~言ってみれば動機なんぞは、どうにでも後付けが可能なので、どうしてもトリッキーな作品の方が喜ばれ、主流になってきた。しかし、この「告白」は違った。誰が犯人でどうやってやったかは、最初から明かされ、動機もおよそ想像できる状況なのだ。それにも関わらず、急かされるようにドンドン読んでしまうのは、その後の展開が読めないからだ。
ある殺人事件を巡る独白のため、時系列は行きつ戻りつを繰り返し、事件から先になかなか進まない。しかし最後の章で、話は一気に進み、予想外の展開となる。う~む、確かに独創性の高い、ミステリー作品なのであった。