怪作「空中ブランコ」で直木賞を受賞した、奥田英朗・十年前のベストセラー犯罪小説。
不況のため、資金繰りや取引先の無茶な要求に苦しむ零細鉄工所の社長・川谷。近隣から騒音苦情まで舞い込み、頭を抱えていた。銀行員の窓口嬢・みどりは、家庭問題や上司のセクハラに悩んでいた。パチンコとセコいカツアゲで生活していた和也は、ヤクザに追い回されていた。まったく無関係だった3人の運命は、益々悪循環に陥っていく・・・。
「比類無き犯罪小説」という宣伝文句と、あの変態精神科医が活躍する大怪作「伊良部シリーズ」の著者だったので、読んでみた。しかしこれが、う~むなのだ。いや、小説としては確かに上手い。登場人物の心情をリアルに描き込む筆力、生活感溢れる表現力、畳み込むような展開は確かに凄い。しかし、この長編が好きかと問われたら、我が輩の趣味ではないと言うしかない。ま~これは純粋に好き嫌いの話であり、小説としてどーのこーのかという話ではない。よ~するに、読んでいて楽しくないのだ。
「最悪」というタイトルが示すように、登場人物はみなそれなりに努力しているのだが、とにかく事態は悪い方にしか展開しない。マーフィーの法則には逆らえないのか、とにかく考えられる最悪の方にしか転がらないのだ。転がった末に幕が閉じる。この幕の降りかたは、それまでの最悪というわけではなく、結構常識的で、なんだか肩すかしにあったようだが、全滅ではいっそう後味が悪かっただろう。
う~ん、犯罪を起こすしかなかった、その必然性を、心理描写を微に細に書き込むことで、成り立たせた犯罪小説は画期的なのだろう。確かにそうだ。最悪の展開に追いつめられた運の悪い人たちの運命が、どうこの先展開していくか、読者には先が全く読めない。犯罪小説とはなっているが、実際にはそこに至るまでの経緯が、この長編の大半を占めている。しかしあまりに読むのが辛くなるほど生々しいので、途中で投げ出したくなったのだが、最後はいわゆるジェットコースター的展開で一気に読ませる。我輩的には趣味ではないのだが、怖いもの見たさで読んでみるのも一興か。