2003年発行の名著なのだ。今頃になって読んだのは、小説ではなく歴史研究書なのに、今年映画化されるようで、店頭に平積みされていたから気がついた次第。そういえばかなり以前、読もうとして忘れていたようだ。
ま~確かに面白い。ヘタな時代小説よりよほど面白い。なにせ幕末の下級武士の生活が、リアルに生々しく描かれているからだ。タイトルの「武士の家計簿」という言葉に惑わされてはいけない。加賀藩の経理担当である「御算用者」の暮らしぶりが、膨大な資料を元に、見事に活写されている歴史物語なのだから。
筆者である歴史学者は、偶然手に入れた古文書が、実は非常に緻密に書き残された、幕末の家計簿であることに気がついた。ダンボール1箱分の古文書を読み解くと、幕末から明治時代という激動期に生きた、下級武士家族の歴史絵巻が浮かび上がってきたのだった・・・。
いや~知らないことばかりなのだ。それなりに時代小説を読んできたつもりだが、本物の資料をベースにすると説得力が違う。こんな生活だったのか、と驚くことばかり。武士は年がら年中、親戚づきあいをしており、出費の大半が交際費だとか、会計のプロにもかかわらず下級武士は借金で首が回らなかった、とか。
貨幣価値も分かりやすく説明されているので、生活実感がリアルに分かる。給与レベルとか、冠婚葬祭の費用とか、料理はどんなものを出しているのか、こずかいはいくらか、などなど。ま~家計簿を、ここまで細かく付けている人は現代でもめったにいないだろうな。
とにかく貴重な古文書を発見した功績も偉いが、それを読み解きここまで分かりやすい研究書として発表したことは凄い。歴史好きなら必読、歴史好きでない人にも大のお薦めの新書の名著なのだ。