怪作「空中ブランコ」で直木賞を受賞している奥田英朗の家族小説。柴田錬三郎賞を受賞した短編集なのだ。
・ネットオークションにハマる妻「サニーデイ」
・突然失業した夫は専業主夫が似合っていた「ここが青山」
・離婚して独身を満喫している男の家に集うサラリーマン達「家においでよ」
・内職に励む妻の密かな妄想「グレープフルーツ・モンスター」
・転職を繰り返す夫に振り回される度に、仕事が上手くなる妻「夫とカーテン」
・ロハスに夢中な妻を、揶揄した小説を書いてしまった人気作家のとった行動とは・・・。「妻と玄米御飯」
どのお話も、どこにでもいそうな家族の内情を、チョッと覗いてみた、という感じ。読後は、どれもホノボノ感が漂うのだ。ま~どこにでもある家庭ばかり、という訳でもないのだが、展開もオチも意外性は少ない。登場人物は、みな至極まっとうな常識人なので、破綻寸前に回避行動をとるのだ。
奥田英朗らしく実に上手い。生活感が漂うリアルな描写。登場人物たちの自然な感情といかにもありそうな行動。仕事の内容や家庭の内情が、子細に描かれるので不自然な感じがまったくしないのだ。
小説ならあたりまえだと思うかもしれないが、下手な作家だと、まずこの背景描写に説得感がない。そうなると、派手な展開でも不自然さばかり目立ち、バカバカしいお話となる。上手い作家だと、お話の背景や環境の描写にリアル感があるので、どんな展開になっても説得力が生まれるのだ。たとえオチがなく、日常生活の子細な描写に終始したとしても、最後まで読ませてしまう筆力の作家もいる。
この奥田英朗は、確かな筆力の上に、極端に突っ走る主人公を据え、派手な展開に持ち込む作家のイメージがある。実はあまりこの作家は読んだことはないのだが、変態精神科医の伊良部シリーズ3作と「最悪」だけは読んでいる。なので、あまりエラソーなことは言えないのだが、読んだ小説はどれもこのパターンだった。しかしこの「家日和」は、いつもの筒井康隆バリ暴走寸前に、ストップするのだ。これはこれでまとまるので読後感も良い。結局「家族が一番」とゆーシンプルなメッセージも分かりやすい。
しかし、ウ~ムなのだ。なんだか物足りない気もするのだが・・・。贅沢なのだろうか?