人気作家・伊坂幸太郎の、ちょっと変わった青春小説。文庫ではなく、伊坂にしては珍しい出版社から出ていた新書版サイズの本。また伊坂にしては珍しく、男女5人の大学生が、入学してから卒業するまでを描いている。
いつもながらの仙台を舞台に、冷静沈着な北村、軽薄な鳥井、ほのぼのした南さん、傍若無人の熱血漢・西嶋、氷のような美人・東堂の5人が主役。社会という砂漠に囲まれ、大学生というオアシスに生きる、若者たちの物語なのだ。
勉学と友情と麻雀と恋で始まるバラ色の大学生活は、些細な出来事から犯罪に巻き込まれ、暗転していく。仲間と助け合いながら困難を克服し、やがてみな無事に社会へ向かって羽ばたいていくのだった・・・。
いつもの饒舌でノリのよい伊坂ブシで、お話は軽快に進むが、やはりそれだけでは終わらない。超能力者の友人というスパイスと、残酷な展開も用意している。が、いつもの伊坂ワールドほどではないのだ。伊坂の作風は、悲惨なお話をお洒落に軽いノリで語るところにある。このお話は、基本は青春ものなので、多少の波乱はあっても、落ち込みはしない。前向きなのだ。中東戦争に突き進むアメリカへの怒りと、シラケる若者への皮肉は、さんざん西嶋に語らせるが、しょせん物語の背景でしかない。社会を砂漠に例え、大学という一時のオアシスで休憩している若者たちの心情と成長を、醒めた目線で描いているのだ。
伊坂ファンには物足りないかもしれない。死に神やおしゃべりな案山子、プロの殺し屋などが登場する、独特の伊坂ワールドに比較すると、スプーン曲げ程度の超能力者では地味な方だ。それでも個性的な登場人物が多いが、決して暴走まではしない。常に冷めた目線の主人公・北村は、トラブルがあっても騒がずに大人の対応をするのだ。
大学生の生活を中心に描く「青春物語」は多数あるが、ま~この物語は新しいスタイルだとか、ユニークな青春もの、というものではなく、伊坂らしさは抑えたミステリー仕立ての青春ものなのであった。