かのこちゃんは、小学1年生になったばかりの元気な女の子。その両親と老犬・玄三郎が住むお家に、優雅なアカトラ猫が迷い込んできました。犬語を解する猫は、玄三郎と夫婦となり、マドレーヌ夫人と名付けられました。そこで始まる、先生やすずちゃんとの出会いと別れを、猫の語りで聞くことになります。賑やかでちょっと不思議で、心暖まるお話なのでした。
「鴨川ホルモー」、「鹿男あをによし」と話題の万城目学(まきめまなぶ)の、直木賞候補にも挙がった書き下ろしノベルスです。それにしても「ちくまプリマー新書」という新書系出版レーベルから出されたのでは、フツーの読者では見つけられないでしょ。いくら人気作家とは言え、新書コーナーに置かれたら、まず気がつきません。僕も大きな本屋の検索システムで探し、やっと新書の棚のすみに埋もれていたのを発見したくらいですから。とても人気作家の、今年出版したての本の扱いではないですね。ま~タイトルからして子供向けの童話だと思われてもしかたがないし、実際に小学生でも十分楽しめる作品なのですが・・・。
いや、本当に絵本にしたら、小学生低学年でも喜んで読んでくれる、楽しくてちょっとだけ不思議なお話なのです。「あられちゃん」を思わせる、元気で変なもんが好きな一人っ娘。かつて鹿男だったお父さんは、元気にはしゃぐ娘を優しく見守ります。マドレーヌ夫人は、自分を守ってくれた玄三郎やかのこちゃんに、キッチリ恩を返そうとします。まるで猫の恩返しですね。
そう、このお話に出てくる登場人物・動物たちは、みんな律儀なのに優しいので、悲しい別れがあっても、読後感は爽やかになれます。人間の夫婦よりよほど愛が深い、玄三郎とマドレーヌ夫人も素敵です。殺伐としたサスペンスを読んだ後には、こんな清涼剤のようなお話を読んでみては、いかがでしょうか。子供たちにもぜひお勧めくださいまし。