最近急にメジャーになった、米澤穂信の原点「古典部シリーズ」の短編集である。このシリーズは、デビュー作「氷菓」、傑作「愚者のエンドロール」、そして「クドリャフカの順番」と高校生・折木奉太郎が探偵役の連作長編である。この「遠まわりする雛」は、高校入学から1年の間に起きた様々な「事件」7編を描いている。
折木奉太郎は、省エネを信条とする高校生。何の活動もしない「古典部」が気に入り入部したのだが、地元名士のお嬢様・千反田の好奇心に振り回され、些細な疑問を解決するのが常であった・・・。
ボクが米澤穂信を気に入ったのは、「春期限定いちごタルト事件」「夏期限定トロピカルパフェ事件」の小市民シリーズからだが、この「古典部」シリーズを読んで、ファンとなったのだ。この作品は、草食系男子の先駆けのようなキャラの主人公が、リアルな高校生感覚で語るのだが、そのユニークなキャラも魅力的で、ほんとに些細でどーでもいいようなことを推理するお話が、結構新鮮だった。
今回の短編でも、先生が授業の順番を間違えた原因とか、旅館先で見た幽霊らしき影の謎、生徒を呼び出す臨時校内放送をした理由とか、学校生活なら日常的に起こるだろうエピソードをネタにしている。しかしいくらなんでも、先生が怒った理由なんぞは、どーでもいいようなことだ。もうちょっと謎らしい謎にしてもらえないのかな~。
ま~「心あたりのある者は」なんぞは、生徒を呼び出す校内放送を聞いただけで、その
理由を推測するだけの話なのだが、安楽椅子探偵の面目躍如たる推理を披露してくれている。また、表題作の「遠まわりする雛」は、地元の祭事「生き雛まつり」のルートが変わった理由を「謎」としてるのだが、自然豊かな田舎の春を舞台に、高校生の微妙で淡い恋心を繊細なタッチで描いているのが美しい。この掌編が無ければパッとしなかったが、最近の血生臭いパズラー・米澤穂信の作品傾向についていけないファンには、一服の清涼剤となる短編集なのである。