文句無しに面白く、未だ興奮が止まらないスポーツ小説なのだ。しかも純な友情を描く感動の青春小説でもある。
勉強はできるがひ弱な木樽。楽天家の天才ボクサー鏑矢。幼なじみの二人は、高校で同じボクシング部に所属していた。圧倒的な強さで勝ち進む鏑矢の前に、立ちふさがるモンスター稲村。憧れの鏑矢に近づこうと、驚異的努力で、驚くべき成長を遂げる木樽。最後に勝つのは誰か。若い女性教師の目を通して語られる、リングでの死闘の行方は・・・。
作者である百田尚樹は、戦記小説の傑作「永遠のゼロ」でデビューしたが、またまた大傑作を出したのだ。しかも前作とは全くジャンルも傾向も異なる作品なのが凄い。アマチュアボクシングというかなりマイナーな世界を、若い女性教師の視点から、地道に描写を積み重ねることで、読者を少しづつその世界に引き込んでいくのだ。
主人公は、天才ボクサー鏑矢の方ではなく、運動すらしたことのなかった木樽。勉強はトップクラスだが弱虫だった木樽は、愚直に地道に努力を重ね、その隠れた才能を開花させていく。天性の運動の能力のため、努力することが苦手な鏑矢と、対局の位置にいる木樽。鏑矢に憧れる、病弱だが天真爛漫な女子マネージャーの丸野。的確な指導で勝利を呼び込む沢木監督.個性的な登場人物を揃え、クライマックスの対決になだれ込んでいく。迫力あるボクシングシーンの連続は、上下巻合わせて756頁の長さを感じさせず、一気に読ませるほど、興奮させるお話なのだ。
しかも単純なバトルの話ではなく、才能とは何かを掘り下げ、天性の才能と努力の賜とを比較考察し、若者に勇気を与えてくれるお話になっている。最後のエピソードもいい。それぞれ互いに戦った若者達の、その後の人生を語り、爽やかな読後感を醸し出している。実に読みごたえのある小説だ。中高校生にも安心してお勧めできる、もちろん昔は若者だった人には、絶対お勧めの青春小説なのである。