大ロングセラーである、池袋ウエストゲートパーク・シリーズ(IWGP)の8作目である。おなじみのマコトが、いつも変わらぬ語り口で、大活劇なお話を語ってくれるのだ。

「千川フォールアウト・マザー」必死に生きようとしているシングルマザーに、忍び寄る魔の手。マコトは救えるのか・・・。
「池袋クリンナップス」ボランティア活動するエリート青年が誘拐され、捜索を依頼されたマコトは・・・。
「定年ブルドック」SM写真をバラまくぞと脅された警官の娘は、マコトに助けを求めてきた。
「非正規レジスタンス」日雇い派遣労働者たちを食い物にする大企業に、単身戦いを挑むことになったマコトの取った行動とは。

果物店の息子・マコトは、今回もレギュラーメンバーGボーイズと共に大活躍。しかし、シリーズ初期の頃とは小説のテイストがかなり異なってきている。もちろん時代の最新風俗を取り入れ、社会的弱者を救う骨格は変わらない。だが、明らかに石田衣良の関心は、先端フーゾクの世界から、社会の歪みに移ってきている。

石田衣良は、このIWGPで十数年前にデビューしたが、ミステリーながらも先端フーゾクを扱い、時代の先頭を疾走する感覚が、人気の秘密だった。シリーズが進むにつれ、登場するフーゾクも次第にエスカレートし、金のために自分の肉体を切り売りする、異様なグロ世界まで行ってしまった。さすがにそこまでなると、読む気が失せてくる。ところが、そんな先端フーゾクを垣間見せるお話から、現代社会の隙間に落ちてしまった、孤独な人々を描くことに次第に視点が移ってきた。

今回の短編集も、扱っているテーマはどれも新聞の三面記事に載っているような話ばかり。シングルマザーの悲劇や、派遣切りなど、それこそ今の日本ならどこにでもありそうな事件を取り上げているのだ。そして、通り一遍の記事では絶対出ない、事件の本質をすくい上げ、解決を試みるのだ。日雇い派遣の実体を暴き、若者に厳しい社会を告発し、社会正義とは、自己責任とは何かを問うのだ。

軽く読めてしまうのだが、書かれているテーマは実に重い話ばかり。格差社会に疲弊していく弱者たちに、真摯にスポットを当てる石田衣良の姿勢は、実に素晴らしいのだった。