それにしても、最近新書で面白そうな本が見あたらないな。今年の前半までは、いろいろ面白い本にありつけたのだが・・・。ま~真面目に探していないし、タイトルだけが手がかりなので、あまり偉そーなことは言えないのだが。しかしそのおかげで、以前チョットだけ評判になった「アホの壁」を手に取ってみた。ま~あのブラックの大御所であり、文学界の異端児である筒井康隆が、レベルの低い本を出すわけないかと思い直し、読んでみた次第である。内容としては、

・なぜこんなアホな本を書いたか
から始まり、
・人はなぜアホな言うのか、するのか、喧嘩をするのか、戦争をするのか
最後に
・アホの存在理由について
で終わる。

宣伝文句は「人間は、考えるアホである」なのだが、それにしても筒井康隆にしてはヒネリがない。人間が如何にアホなことをしてきたかなど、わざわざ言われなくとも常識のはずだ。心理学を持ち出して説明したり、人間の愚考やバカな行動を多数取り上げてみなくとも、人類の歴史を知っているなら、人がアホであることなど百も承知なのである。まさか筒井康隆は、人類の大多数が優秀だとでも思っているのだろうか・・・。

それにしても筒井康隆とあろう人が、かつて一世風靡した作家が、なんでこんな新書を書いたのかが不明だ。新書なら、社会・文化・科学などに対する、何らかの「新鮮な」切り口・見識・アイデアがあってしかるべきだ。例えば、日本文化を「辺境」、「日本語」とか、「アニメ」などのようなキーワードで切り取り、日本文化に対して新鮮な角度から光を当て、特徴を際だたせてくれるのが新書の役割だったはず。

この「アホの壁」では、筒井康隆にしては意外にも、まっとうな姿勢で、人類が如何にアホなことをしてきたを書き連ねている、だからつまらないのだ。当たり前すぎて・・・。

かなり酷評をしてしまったが、これは数十年前まで、我が輩は筒井康隆のファンで、初期の頃の作品の大半は読んできたからだ。今でこそ文学界の大御所のような顔をしているが、昔は筒井康隆のファンだ、なんてことは人に言えなかった。文学を破壊するようなイメージがあり、超異端児だったのだ。それほどぶっ飛んだ思想や表現をしてきたはずの筒井康隆が、こんなパロディにもなっていない新書を出したので、こんな感想になってしまったのだ。
ネット上での評判は、それほど悪いわけではないので、これは純粋に個人的意見なので、悪しからず。