「引きこもり探偵シリーズ」で多少有名な、坂木司の連作短編集である。歯医者さんを舞台にした連作短編集「シンデレラ・ティース」と、対をなす小説でもあるのだ。
しっかり娘のヒロちゃんは、夏休みのアルバイトとして那覇のゲストハウスでアルバイト。テキトー男のオーナー代理に、双子で元気な老掃除人たちに囲まれ、まじめで一本気のヒロちゃんの奮闘が、続くのだった・・。
相変わらず、坂木の小説の主人公はよく泣くな~。坂木司との出会いは「引きこもり探偵三部作」だったのだが、主人公が男なのによく泣くのには驚いたもんだ。ナイーブで純真なのは分かるが、なんだかね~。
今回の主人公は、女子大生なので、辛いときに泣くのに違和感はない。また、世話好きで昔気質で頑固な性格という、今時でないキャラでもあり、分かりやすい性格だ。
坂木司は、デビュー作では探偵役を登場させ、とりあえずミステリーの形式をとっていた。しかしその後は、舞台をクリーニング屋、歯科医、宅配便、ミニホテルとミステリー小説にしては、珍しいというか地味な職業を選んでいる。そしてその業界特有の知識を生かした、「日常の謎」系ミステリーを書いているのだ。ま~ミステリーといっても、謎らしい謎もなく、謎解きそのものを期待してはいけない。どちらかというと、その地味な職業で奮闘している、青春物語風の軽い小説となっている。
この「ホテルジューシー」も、正義感がやたら強く、あまりにも真っ直ぐで堅いヒロちゃんが、いーかげんなオーナー代理に憤慨し、怪しげな客に怒り、傷つき、奮闘する物語なのだ。そして、沖縄の美味しそうな料理をふんだんに紹介し、独特の気候や風習を交えながら、ヒロちゃんの堅い心が人にもまれることで、成長していくお話になっている。