傑作「永遠のゼロ」でデビューし、「ボックス」で圧倒的人気を得た、百田尚樹の初めての短編集。クリスマスイブの夜に繰り広げられる、五編の心温まる奇跡のお話なのだ。

「魔法の万年筆」不運続きの恵子は、ホームレスの男から、施しのお礼にと三つの願いが叶う魔法の万年筆をもらい・・・。
「猫」クリスマスの夜、派遣社員の独身女性は、あこがれの青年社長と残業することになり・・・。
他に、「ケーキ」「タクシー」「サンタクロース」と、不運な独身女性の、聖夜に起きた奇跡のお話。

百田尚樹は、希望ある話を書きたいのだそうだ。人間の醜さや愚かさばかり描くお話では、小説として意味がないと言う。まさにその通りの、温かで泣かせる短編ばかりである。

ま~しかし、同じコンセプトのお話が五つもあると、さすがに食傷気味になる。短編集にするなら、違うテイストの作品も入れた方が良いはず。せっかく一つ一つの作品は、純度が高いのに、並べてしまうのはもったいない。奇跡は滅多に起きないから奇跡なのだ。毎回起きると冗談になってしまう。

同じような泣かせる短編集なら、浅田次郎の傑作「鉄道員」がある。こちらは、様々な境遇の人が様々な体験をするので、非常にバラエティに富んだお話になっている。しかも人生経験に裏打ちされた、鋭い人生観が、読者に深い感動を与えてくれる短編集なのだ。

百田尚樹は、「永遠のゼロ」「ボックス」と、素晴らしい作品を二つも立て続けに上梓できる実力派だ。どうせ短編集を出すなら、構成をチョットだけ変え、別のパターンの短編を混ぜるだけで、一つ一つの短編が輝きを増すはず。

ま~これは、ワガママな読者の勝手な言い分か。読者によっては、特に女性なら、このようなお話ばかり読みたいのかもしれませんが・・・。
厳しく冷たく世知辛い世の中で、せめて温かな夢でも見てみたい独身女性に、お薦めの佳品でした。