あの森見登美彦の、妄想が炸裂する「エッセイ」なのだ。「太陽の塔」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビューし、怪作「四畳半神話大系」を出し、傑作ラブコメ「夜は短し歩けよ乙女」で、人気急上昇中に書かれたエッセイだ。

ま~中身は、竹林の手入れをするためにど~したこ~したという、作者自身で語っているように、無益で中身がなくヒマつぶしにしかならないしろもの。実際の出来事と、作者の妄想が入り乱れ、友人や編集者を巻き込み、無理矢理文章にした感がある。ホントは★レベルなのだが、それでも「森見ワンダーランド」とも言える、独特の文体はまだ健在で、その表現力だけで★★★。今まで森見の作品を読んだことの無い人には勧めないが、最低でも森見作品を3冊以上読んだことがあれば、ニヤリと楽しめるはず。

そういえば、ライバル万城目学の初エッセイ「ザ・万歩計」も、出だしこそシロートっぽかったが、それでも次第に筆の滑りが良くなり、終わりの方はエッセイらしくなっていたもんだ。ま~浅田次郎の爆笑エッセイ「勇気凛々ルリの色」とは比べくもないのだが、デビュー直後から書き始めたという意味では同じはず。しかしそれまでの人生経験の厚みがまったく異なるのだ。浅田は自衛隊出身も異例だが、アパレルの営業やらヤクザ紙一重の不動産業、金融業と豊富な経歴の持ち主。森見は、大学出たてホヤホヤで、数年の社会経験しかない。この差は歴然で、やはり経験の幅の違いがエッセイの中身の差に現れてしまうのだろう。

四畳半にこもって妄想していた森見に対して、同年代の万城目学は、世界を放浪してきた行動派。なので、まだ自身の体験に基づいたエピソードを万城目はイロイロ書ける。編集者からお題やら竹林手入れやらを仕掛けてもらわないと、何も書けない作家も珍しい方なのだが・・・。

作家は若いうちにデビューしてしまうと、すぐに枯れてしまう、というのが我が輩の経験則。様々な社会経験を積んだ後に作家デビューした方が、人生の引き出しが多数ある分、長持ちする。百田尚希は、大傑作「永遠のゼロ」でデビューしたが、長い放送作家としての下積みがあった。
もっとも何事も例外があり、直木賞作家・桜庭一樹は、十代でライトノベル作家としてデビューしているが、希有な読書家としても知られ、部屋に閉じこもっても豊富なストーリーを紡ぎ出し続けている。想像力というか創作力というか、妄想力に長けているのだろう。恩田陸もそうだが、女性の作家にこの手のタイプは多い。

そういった意味では、エッセイはその作家の実力を現してしまう作品なのだろうな。エッセイは通常週刊誌や月刊誌に掲載するので、毎回締め切りに追われることになる。締め切り間際に苦し紛れで書く文章には、つい作家の本音がのぞいてしまう。楽屋落ちになりかねない文章も、その作家のファンならそれもまた、楽しみというもんだ。森見ファンなら勧めなくても買うだろうが、新人作家の生態を知りたい人もどうぞ。