ヤングアダルト(YA)小説の第一人者「あさのあつこ」が書き、200万部売れているベストセラー「The MANZAI」の第六巻。
主人公の瀬田歩が、秋本貴史やその仲間たちとともに、中学校3年間の生活を、5年をかけて描いてきた、人気青春小説の完結編である。

県立高校に、仲間たちと共に無事に合格した瀬田歩。みんなと喜びに浸っていたのだが、合格した高校の校長先生が、突然秋本の家に現れたことで、大変な事態に陥っていく・・・。

この小説は、個性豊かな男女の中学生たちが、それこそ掛け合い漫才のような、軽快なおしゃべりを繰り出すのが最大の特徴だ。5年前のスタート当初は、野球少年から一転して漫才少年とは、あさのは何を考えているのだろうか、と思ったもんだ。しかし、最近の漫才ブーム(今年で最後かな)を見てると、さすが流行作家は、時代を先取りしているのだな、ということが良く分かる。これからは、バリバリの「スポ根」系主人公の時代ではなく、最近「草食系」と括られることが多い、ナイーブで優しげな男の子が流行りになることを、直感していたのだろう。

そして、あさのの描く男の子は、みな内省的だ。今回の主人公・歩も、悲劇的体験により傷つきやすく、引っ込み思案な性格。で、あまり自己主張もできず、どちらかというと、周りに流されるタイプだ。だから、秋本の強引な誘いから漫才ライブを始めてしまうのだ。

この手のタイプは、昔から常に一定割合いた。最近急に湧いて出てきたわけでは決してない。しかし俄然注目されてきたのは、スポ根肉食系男子の割合が減ってきたこともあるが、オタク文化に対する世間の見方が、次第に肯定的になってきたからなのかもしれない。世間がオタク文化を、頭から否定しなくなってきたので、今までの男らしさ=マッチョの図式が崩れ、男の子たちも無理矢理自分の価値観をねじ曲げる必要がなくなったのだろうな。男らしさなどというものは、文化からくる刷り込みにすぎないので、マッチョでなくても良いのなら、好きなオタクの方が楽なのだろう。

歩の友人の秋本は、明るい体育会系のマッチョ。引っ込み思案な歩を、とにかく引っ張り回し、表舞台に引きずりだそうとする。この凸凹コンビと仲間たちが織りなす友情劇は、素直に楽しめるし感動する。小学生高学年から大人まで、安心してお薦めできる良書なのだ。