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人工知能講座18

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眼が進化すると脳も進化する

伴くん「天馬先生、パーセプトロンもネオコグニトロンも、CNNもそうですが、どうして人工知能の研究というかニューラルネットワークの研究は、視覚野ばかりやっているのですか?」
天馬「良い質問だ。ニューラルネットワークの研究は、生物の脳神経をモデルにして人工知能を創ろうとしていることは説明した。ところで、脳に入ってくる外部からの刺激には、なにがあるかね?」
伴くん「えーと、いわゆる五感だから、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚が伝わっているはずです」
天馬「そうだな。ではそれらの感覚で、最も重要なものはどれだ?」
伴くん「それは視覚でしょうね」
天馬「なぜだ?視覚は、光がない夜間では見えず、目が直接向いている方向という狭い範囲で、しかも近距離でしか使えないぞ。聴覚なら、聴きとれる範囲や距離が、視覚よりかなり広い。嗅覚だと、かなり時間が経ってからでも分かるぞ」
猿田くん「いや~ボクは鼻が利くと言われているし近視だけど、それでも視覚から得られる情報の方が圧倒的に多いですね。雑踏の中からでも、可愛い子がいたら瞬時に見つけることができるし」

天馬「目は口ほどに物を言うというが、猿田の場合は目より圧倒的に口だな。君たちは『カンブリア爆発』という言葉を聞いたことがあるかね。カンブリア紀とは、およそ5億4000万年前のことだが、このころ地球上で多様な生物が爆発的に誕生したことを、カンブリア爆発と呼んでいる。この原因として様々な説が唱えられているのだが、その有力な説として浮上したものが、生物が眼を発生させ視覚を獲得したからだ、という説だ。これを『光スイッチ説』というが、それまで偶然に頼ることが多かった捕食が、視覚の獲得により捕食を確実にすることが可能になった。逆に非捕食者は逃げたり固い鎧で体を覆ったりして、食うか食われるかの競争が激しくなり、爆発的に生物が多様になったというものだな」
猿田くん「生存競争なら、伴くんは筋肉でマッチョに武装だけど、ボクなら逃げ足で勝負だな。愛ちゃんは・・・」
愛さん「なに、くだらないこと言っているの!私は美貌で勝負よ。とにかく眼は、生物にとって非常に重要な器官なのですね」
天馬「そうだと言いたいところだが、眼さえあればよいということではない」
愛さん「え?眼が生存競争にとって最も重要な器官だと言いましたよね」
伴くん「いや、天馬先生は『視覚』の獲得が重要だと言ったんだ」
愛さん「視覚?眼があるから見えるのでしょ」
伴くん「天馬先生の説明だと、インプットされた画像をCNNで処理しないと、きちんと画像を認識できないはずだ。眼はただのカメラでしかなくて、その後ろにあるニューラルネットワークがあって、初めて画像認識ができている。つまり視覚は、眼と脳がセットになって実現できるんだ。なるほどね」
天馬「さすが伴くんの理解力は優れているな。話を戻すと、ニューラルネットワークの研究が『視覚野』から始めることが多いのは、実験のやりやすさだけではなくて、生物にとって視覚が最重要だからじゃないかな」
猿田くん「そうかな。人工知能の研究なんだから、重要なのは考えている前頭前野あたりじゃないの」
天馬「CNNの登場で人工知能ブームが起こって、一気に研究が進んだろう。これはロボットや自動運転の自動車でも同じだ。例えば自動車のコンピューターに入ってくるセンサーデータは、初期はソニックセンサーやライダーつまりレーザーレーダーのような単純な物体検知情報でしかなかった。ビデオカメラがあっても、リアルタイムでの形状認識などは難しく、このため完全な自動運転はなかなか実現しなかった。それがCNNのようなディープラーニングの登場とハードウェアの進化によって、動画からリアルタイムで物体認識ができるようになった」
伴くん「そうか。ビデオカメラだけでなくCNNとのセットで、やっと視覚野の機能が形成できたのですね。コンピューターは視覚野を獲得できて、まるでカンブリア爆発のように急激に進化したんだ」
天馬「まあそうとも言えるな。自動運転車は、この視覚野の機能を獲得すると、実は多種多様なセンサー類を大幅に削減ができる。視覚から入る情報は膨大で、2つ並べると距離が分かり、物体の立体形状や動く方向と速度までわかる。もちろん入力される動画を、リアルタイムで解析できる『頭脳』がなければダメだが」
伴くん「逆に生物は、カメラである眼と動画像認識できる脳を進化させることで、多様な情報を得て、生存競争を勝ち抜こうとしてきた、ということですね」
天馬「すべての生物が同じような戦略を取ったわけではないがね。眼は光がないと役に立たない、リアルタイム性が高いが時間変化に弱いなどの欠点がある。だから聴覚を発達させ超音波を出し、物体や獲物までの距離を測るコウモリや、時間変化に強い匂いを得ようと嗅覚を発達させた肉食動物もいるだろう。また、嗅覚や味覚のような化学センサー、聴覚や触覚のような物理センサーだと、ダイレクトに入ってくる情報をそれほど処理しなくても役に立つ。しかし視覚のような光学センサーの場合、動画像はそのままでは役には立たない。脳も同時に進化させて初めて役に立つ」
伴くん「つまり、視覚からの情報処理は、脳の負担が大きいということですか」
天馬「そういうことだ。原始的生物だと、視覚といっても光があるかないかしかわからない単純な光センサーだった。それが水晶体というレンズを発生させ、ピント合わせまで出来るようになると、動画像から物体認識できるような情報を得られるが、脳も同時に高度な処理が求められるようになった」

愛さん「脳を発達させようとすると、脳は必然的に大きく重くなってエネルギーも消費しますね。だから大型動物になって、捕食量も増やすしかなくなるのですか」
猿田くん「やがて巨大な恐竜となり、地球を支配するようになった、なんて本当ですか?そんな説があるのかな?聞いたこともないな。そもそも恐竜の脳は、体の割に非常に小さいと聞いていますよ。だけど頭だけでなくて、背中の中央部分にも脳があって、分散処理していたという話もあったな」
天馬「巨大恐竜の神経中枢部が体の中央にもあったのは、神経の伝達距離が長すぎリアルタイム処理が困難になったからという説は、かつてあった。しかし、さすがにマユツバものだね」
猿田くん「だいたい生物の脳を進化させようという動機は、種として生存競争に勝つためですよね。個々の生物の能力を高める戦略以外に、集団での能力を高めようとする戦略もあったはずですよ。たくさんの子供がいれば、多少食べられても種として生き残れる魚たちのように」
天馬「もちろん食物連鎖の下位にいるプランクトンなどは、大半が食べられてしまう前提で膨大な量の子供が生まれてくる。しかし最上位の方にいる大型捕食動物間でも、生存競争は激しい。ホモ・サピエンスは、大脳を進化させて道具を操り、猛獣にまで勝てるようになった。現在の世界の大陸で、大型動物がアフリカ大陸の一部にしか生存していない理由を知っているかね」
愛さん「気候変動によるものですか?」
天馬「いやそうではない。すべて人間が食べ尽してしまったのだよ。人間は雑食性で何でも食べることで生き延びてきたのさ。ホモ・サピエンスは20万年前のアフリカが起源といわれている。同じ先祖を持つネアンデルタール人は、同時代のホモ・サピエンスより大脳が大きく身体も屈強だった。しかし生存競争に勝ったのは、ネアンデルタール人ではなく、ホモ・サピエンスだった」
愛さん「なぜですか?先ほどの話では、大脳が大きいほど認識能力が高いので、生存競争には強いはずじゃないですか」

天馬「ホモ・サピエンスは、ネアンデルタール人より頭蓋骨の容量が小さかったが、大脳の中でも前頭葉の部分は大きかったんだ」
愛さん「どういうことですか?」
天馬「腕力もあり脳も大きかったネアンデルタール人は、個々の能力は高いが何万年経っても道具を進化させることはできなかった。これは家族単位で暮らしていたが、大きな集団を形成していなかったことが原因と言われている」
伴くん「なるほど、技術が広く伝わらないからかな」
天馬「そうだ。たとえば偶然でも良い道具ができたとしても、個人ではそこからさらに良いアイデアは生まれないし、個人でしか使わないので広まらない。それに対してホモ・サピエンスは、前頭葉を進化させてコミュニケーションを発達させた。つまり意思疎通ができるので、集団を形成することができ、ノウハウも伝承することができたのだ。これにより道具のバラエティが増えて、集団での生存競争に打ち勝ってきたと言われている」
愛さん「天馬先生、非常に面白い話ですが、いつのまにか本論とかけ離れてきましたよ」
天馬「おや、どこからこんな話になったのか忘れてしまったな」
猿田くん「頭はデカけりゃいいというものじゃない、という話でしたかね」
伴くん「もともとは、視覚野の話でしたよ」

次は【人工知能講座19:人工知能に耳を与えるには】

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