ランチタイム
キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴る。すると人事の日登美さんが入ってきた。
日登美さん「天馬先生、講義の途中かと思いますが、昼食にいたしましょう。この研究開発センターにあるカフェテリアにご案内いたします。みなさんも一緒にいかがですか」
愛妻弁当持参の伴くん以外は、人事部社員とぞろぞろと2階のカフェテリアに移動した。カフェテリアはガラス張りの開放的な空間で、社員で賑わっていた。ランチは好みの料理を選び、トレイをレジに置けば自動精算となる方式だ。
天馬「あれ?支払いは?」
日登美さん「顔認証による自動引き落としです。もちろん先生の分は、こちらで負担させていただいています」
天馬「ありがとう、いや皆はそうだろうが、僕は顔認証の登録はしてないよ」
猿田くん「この建物の入口をIDカードで入ったと思いますが、顔認証登録していない人は、ドアのカメラで顔を撮影してID カードにデータとして紐付けてます」
天馬「さすがセキュリティ対策は進んでるな」
日登美さん「万が一カードを紛失しても、他人のカードで入ろうとすると警報が出るので安心ですし、ドアが開いている時に大勢の人がぞろぞろ出入りしても、顔認証しているので在室確認も問題ないです。セキュリティは万全だと思いますよ。それに、このシステムにしてから顔写真の撮影が不要になり、カード発行が簡単で早くなったので、人事としては助かっているんですよ」
窓際で明るい4人用テーブルが空いていたので、みんなで食事を始めた。
日登美さん「当初は、所長が昼食でご挨拶するはずでしたが、急な外出が入ったためできなくなり、大変失礼しました」
天馬「いやいや若い人と一緒に食べた方が、僕も気楽でいいよ」
愛さん「おや先生もまだ若いじゃないですか。独身ですか?」
猿田くん「お、愛ちゃんいきなり聞くね。天馬先生ダンディーだからね。ちなみにボクも独身だよ」
愛さん「猿ちゃんのことぐらい知ってるけど、興味ないもん」
天馬「あー僕は、まだ独身ですよ」
愛さん「あら素敵。でもマリリンさんみたいな超美人と一緒だと、他の女性に興味がなくなるのでは?」
天馬「いやいや、マリリンはそんな対象にはならないんだよ」
猿田くん「しかしもマリリンさんは、スーパーモデル並みのルックスとアマゾネスのようグラマラスボディで、アニメやゲームに登場する美少女キャラみたいだな~」
日登美さん「皆さん先生に失礼ですよ。午後の講義は13時からですので、ごゆっくりと。私は居室に戻りますが、講義終了予定の17時半頃にまた伺いますので」
ワイワイと騒がしい昼食を終えて、天馬は元の会議室へ急いで戻った。気持ちの良さそうな緑が眩しい中庭を散策したかったのだが、大学に置いてきたマリリンや飛雄が心配だった。持ち込んだ自分のノートパソコンを、このセンター内ネットワークに接続するわけにもいかないので、スマホの5Gでテザリングした。天馬はクラウドで稼働しているAI稼働監視システムにログインして、ログをざっと確認する。特に不審なエラーが無かったので天馬は安心した。もっとも飛雄が回答できないような質問があった場合には、天馬に緊急通知が入るはずなので、大きな問題はないとは思っていたのだが。