ブロックチェーンが流行り出している。今年のIT系展示会には、必ずと言ってよいほど、ブロックチェーンというキーワードが登場する。もっとも「フィンテック」と不可分の扱いであり、フィンテックを支える技術という文脈の中で説明がなされている。

ブロックチェーンに関しては、私は9月に「ブロックチェーンは銀行を滅ぼすか」というNewsを書いているが、ここでは、ブロックチェーンそのものより銀行の体質を書いた。日本のメガバンクは、全行とも「R3 CEV」というスタートアップ企業が仕掛けたウォール街主導のブロックチェーン・コンソーシアムに参加している。このコンソーシアムは、世界の金融機関が参加している唯一のブロックチェーン・コンソーシアムで、横並び体質の日本のメガバンクは、こぞって参加している。フィンテックという黒船の到来で銀行は軒並み瓦解していく、と煽られればメガバンクは参加しないわけにはいかないのだろう。

それにしても、「仮想通貨」の根幹技術であるブロックチェーン「分散型台帳」の本質は、P2Pを用いた「分散」と、互いを信用できないことからくる「公開主義」にあると思っている。そもそも仮想通貨は、ウォール街が牛耳っている既存の巨大金融産業に対するアンチテーゼであり、金融業界とは真っ向から対立するもののはずだ。したがってメガバンクが、仮想通貨そのものを危険で排除すべきブラックマーケットと断じて排除するなら理解できる。それが自らブロックチェーンを取り込もうとしている行為が、私にはまだ理解できていない。

銀行は、中央集権型管理の権化みたいな組織であり、毎年数百億円も費やしてレガシーなシステムを維持している。つまり基本思想は「中央集権主義」であり、「秘密主義」だろう。ブロックチェーンの「分散」、「公開」とは、水と油みたいなものだ。最近フィンテックと煽られ、銀行が最新テクノロジーを取り入れようと、検討するのはしかたがない。
それがブロックチェーンまで飲み込もうとしているのは、今まで数千億円もの莫大な投資をしてきた勘定系レガシーシステムを、捨て去ってまで生き残る戦略なのだろうか?それとも「敵」の武器であるテクノロジーを徹底研究して、弱点を探る戦略なのだろうか?まさか、ブロックチェーンの本質も理解せずに、フィンテックという流行技術の1つとして投資しているだけではないと思いたいのだが・・・