先日のNHKニュースで、IBMワトソンが女性の癌患者の命を救ったと報じていた。医師に「急性骨髄性白血病」と診断された60代の女性が、抗がん剤で数ヶ月間治療を続けていたが、改善は見られず容体も悪化。しかし、IBMワトソンによって再度病状を分析したところ、彼女は「二次性白血病」だったと判明。抗がん剤の種類を変更すると症状が改善した。そして治療の結果、無事に退院することができたのだ。

使用されたワトソンは、東京大学医科学研究所が導入し、2000万件を超える研究論文や、1500万件を超える薬の特許情報を学習させたもの。症状に関連する情報を探り、根拠とともに解決策を提示できる。この診断にかかった時間は約10分。このニュースを私も見ていたが、女性患者と医師もTVに登場して、その状況を説明していた。

このIBMのワトソンを、マスコミではよく「人工知能」という表現をしているが、その実態は「自然言語処理系」が得意な機械学習プログラムと思われる。MSやGoogleの機械学習系プログラムは、学会で論文を発表したりOSSとしてソース公開しているので、そのアルゴリズムなどは公開されている。しかしIBMワトソンは、ほとんどその内容が非公開のため、アルゴリズムは不明。しかし、元々はアメリカの「クイズ王選手権」で2011年に優勝したプログラムを発展させたものなので、『英語での質疑応答処理』がベースのはずだ。したがって、その機能や性能は原則として英語の文献が前提なので、前述の薬の論文数はすべて英語の研究論文のはずだ。(私の想像だが・・・)

世界の研究論文は英語が大前提なので、『研究論文の検索』ならIBMが得意なのは当然だろう。もちろん単純な「あいまい検索」などではなく、「自然言語処理」を施して意味抽出したうえでのアドバイスなので、高度な技術なのは確かなのだが。

今年になってIBMは、ワトソンのクラウドサービスに日本語APIを追加している。これで、日本語処理もかなり楽にできるようになったのだが、英語と比べるとマダマダレベルが低く、APIの使用料も非常に高価だ。未だに日本語を直接処理できないMS AzureやAWS も、早く日本語対応してもらい。そうでないと、ワトソンの使用料がいつまでも高額なままだ。

ちなみにワトソンが医師の代わりに「診断」したら違法だ。あくまで医師の判断を補助するためのツールでしか使えない。まあ責任問題があるから当然なのだろうが。