2017年の後半ごろから流行り出したRPAは、2018年になるとIT系の展示会で雨後の筍のように大量発生して宣伝合戦を繰り広げていた。今年秋の各種展示会でも、なぜか人工知能コーナーで大量に出展されていた。
ご存じRPAとはRobotic Process Automationの略称で、単純に繰り返される事務作業を自動化するためのソフトウェアだ。一昔前にやはり大流行したExcelマクロとほとんど同じようなもので、技術的にみて新鮮味はない。最初みたときは、何を今更こんなものが流行るのか理解できなかった。しかもこれが人工知能だというような営業をしている企業が多く、クライアント企業をあまりにバカにしている気がした。
しかし展示会で営業の説明を聞いている善男善女たちは、なにも疑問も抱かずに素直にうなずいている。ま~日本の経営者やビジネスパーソンのITリテラシーが、こんなレベルだから世界から取り残されているのだろう。それにしてもExcelマクロのブームは、せいぜい十数年ほど前のことだったから、少なくとも40歳以上の世代なら覚えているはず。ロボティクスとかAIだとかの名前で化粧直しただけで、気がつかないのだろうか。
RPAを宣伝していたある企業のエンジニアに話を聞くと、驚いたことに中身は昔のExcelマクロそのものだった。これでは動作するアプリは限定してしまうと言うと、そんなもんだと回答していた。こんなインチキなRPAは少数派だとは思うが、Excelマクロブームが終焉した原因を解決したのか聞いてみたが、まるで話が通じなかった・・・
以前のExcelマクロブームの時も、事務作業の生産性向上のために、PC業務で単純な繰り返し作業をマクロで自動化していた。これはこれで役に立ったので、Excelの達人がいる企業ならどこもマクロを使っていたと思う。ちょうど事務作業を派遣社員に任せることが一般的になり、派遣社員もExcelを駆使できることが必須スキルになっていた時期だった。マクロはプログラミングするよりは簡単なので、企業内で大流行していたと思う。
しかしこの流行期間は意外に短かった。5年もなかったように思える。最大の原因は、複雑なマクロは作成者しか理解しておらず、その担当者がいなくなると誰もメンテナンスできなくなることにあった。
その頃は、ロクにパソコンを操れない管理職ばかりだったので、派遣社員が自分の事務作業の効率化のために勝手にマクロを作り、社員から喜ばれていた平和な時代だった。しかしその担当者が異動や退職すると、マクロはすぐに使えなくなる。プログラマーでないため仕様書など皆無で、中身も動けばよいというレベルでマカロニ・スパゲッティ状態。OSやアプリがバージョンアップすると、マクロはすぐに動かなくなり、結果的に長くは使えなかったのだ。
ということで、RPAはこのExcelマクロの二の舞にならないのだろうか。まっとうなRPAならWebアプリやWindowsのアプリであれば原則動作する。専門家でなくても、担当者レベルでRPAの動作設定が可能と宣伝している。マクロを作成できる人なら、実際にRPAの設定ぐらいできるだろう。
まともの企業なら自社で利用しているアプリケーションは、クラウドかサーバーで稼働しており、Webアプリが大半だろう。ローカルアプリはせいぜいOFFICEくらいなもんだ。しかしブラウザを利用するWebアプリをRPAで動かすと、チョットでもブラウザや対象アプリがバージョンアップしてUIが変化するとエラーになる。パソコンの裏で稼働しているアプリが、警告のポップアップウィンドウを出すとRPAは停止する。RPAの稼働条件を聞いている担当者なら分かるはずだが、担当者以外はエラーの理由は分からない。これではExcel時代と同じだろうな。ただ、今時の管理職ならITリテラシーが高い「はず」なので、対策を講じることを期待するしかないのだが・・・