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人工知能講座2

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人工の知能を創る夢

アラン・チューリング

イギリス人のチューリングは1912年に生まれた。ケンブリッジ大学で学び、数学で優秀な成績を修め、1936年に“On computable numbers, with an application to the Entscheidungsproblem”という有名な論文を発表する。そこで「万能チューリング・マシン」という非常に重要な概念を打ち出した。
これは、旋盤とか紡績機のように1つの機能しかない機械を多種類作るのではなく、機械が1本のテープから順番に命令を読みだしていけば、様々な仕事ができる万能マシンを作ることができるとしたのだ。多種多様な作業を行うために、エンジニアは多種多様な機械を無限に作る必要はなく、万能マシンをプログラムすればよいのだと。これは現在のコンピューターの基本的なアーキテクチャーを確定する重要な理論だ。
第二次世界大戦が始まると、チューリングは当時解読不可能と言われたドイツ軍のエニグマ式暗号機を解読するためのチームメンバーとして働くようになる。1941年にチューリングは電気機械式の暗号解読装置を生み出し、ノルマンディー上陸作戦が成功することで、終戦を大幅に早めることができたのだ。

第二次世界大戦が始まると、チューリングは当時解読不可能と言われたドイツ軍のエニグマ式暗号機を解読するためのチームメンバーとして働くようになる。1941年にチューリングは電気機械式の暗号解読装置を生み出し、ノルマンディー上陸作戦が成功することで、終戦を大幅に早めることができたのだ。

この頃、アメリカでは大砲の弾道計算のために、ペンシルベニア大学で真空管方式のデジタル計算機ENIACを開発していた。18,000本近い真空管を使用した30トンもの巨大な装置のENIACは終戦後に完成し、その存在は1946年2月に一般公開されて大きく報道される。これが世界初のコンピューターと呼ばれているものだ。イギリス政府はアメリカと対照的に、暗号解読機を軍事機密として一切を隠蔽し、チューリングの功績はまったく知られることはなかった。
終戦後、チューリングは人間の脳の思考モデルを機械で実現する”Electronic Brain”と呼ばれるマシンの開発を目指した。そしてプログラム内蔵型コンピューター”ACE”の設計を行い、初期のコンピューター Manchester Mark I のソフトウェア開発に従事した。
そして1950年に「計算する機械と知性」という論文で、世界的に有名な「チューリング・テスト」を発表。この論文は次のように始まる。「私は『機械は思考できるか』という問題を検討することを提案する。そのためには、まず『機械』と『思考』という言葉の定義から始めなくてはならない」
ところが1952年、チューリングは警察に同性愛の罪で逮捕され、有罪となってしまう。そしてチューリングが自宅で毒リンゴをかじり、死んでいるのが発見される。人工的に人間の脳を創るというチューリングの夢も、そこで途絶えてしまうのだ。

愛さん「それにしても実話とは思えないくらい、チューリングは波瀾万丈で悲劇的な生涯ですね。なんで天才的な科学者であり戦争の英雄が、そんな同性愛の罪などで有罪になったのですか?」
天馬「当時のイギリスでは、同性愛は罪だったのだよ。しかもイギリス政府は、暗号解読機の存在は国家の極秘情報として、第2次世界大戦中のチューリングたちの記録を抹消し、彼や彼の同僚の活動についてのあらゆる痕跡は消され、徹底的に隠していたからね。警察は知る由もなかったからだ」
伴くん「チューリングは、法廷で戦争の英雄だったことを訴えなかったのですか?」
天馬「そうだよ。チューリングは法廷で、『事実について争うつもりはありません。しかしその上で無罪を主張します。私の行いが罪であるべきでないからです』としか主張しなかったそうだ。当時のイギリス首相チャーチルは、彼らを『金の卵を産んでも決して鳴かないガチョウたち』と称している。酷い話だ。関係者たちはみな、その秘密を守り、1974年に一般公開されるまで、イギリス国民は誰もチューリングの偉業を知ることはなかったのさ」
猿田くん「でもなんで、そこまでして暗号解読機の存在を隠したんだろう。アメリカのように情報公開して、イギリスの科学技術の高さをアピールすればよかったじゃないですか」
天馬「チャーチルの老獪さは、常人ではうかがい知れないものだ。イギリス政府は、終戦後もエニグマ式暗号機が解読できたことを極秘扱いにしている。そしてドイツから没収した数千台のエニグマ式暗号機を、旧植民地などに普及させたのだ。つまり絶対に破られない暗号機と偽って使用させ、密かにその通信を傍受し各国の内情を把握していたのさ」
伴くん「Great Britain大英帝国と自分で名のるくらいの尊大な国家は、そのくらい汚いことをやっていたのですね。でも長い目で見ると、チューリングのような天才を殺してしまったことで、イギリスは結果的にコンピューターの開発競争から脱落してしまってます」
天馬「その通りだ。大英帝国はBritish Empireの日本語訳だがね。しかしこの講義は、寄り道ばかりしていては進まないな。まあとにかく、人工的に知能を創ろうという試みと、コンピューターの発明は不可分だったことが、よく理解できただろう。では次に、ニューラルネットワークの話に移ろう。マリリン、ニューロンのスライドを表示してくれ」

天馬「生物の脳神経ネットワークは、ニューロン(神経細胞)同士がシナプスで接続されている構成だ。シナプスは隣のニューロンとは実際には結合しておらず、わずか20~30ナノメートルほどの間隙がある。ニューロン内の電気信号が閾値を超えて活性化すると、ノルアドレナリンやドーパミン、セロトニン等の神経伝達物質を用いて隣のニューロンに信号を伝達している仕組みだ」
愛さん「天馬先生、脳全体を電気信号で伝達させた方が、早く処理できると思いますが、なぜわざわざ化学物質を使うのでしょうか?」
天馬「そこが生物の巧妙なところだ。電気信号では単純に信号のON/OFFを伝達するだけだが、ニューロンに何度も刺激が入り、一定の閾値を超えてから隣に信号を伝達することにより、記憶や学習が可能になったのだ」
猿田くん「どうしてそれで学習ができるんですか?」
天馬「神経回路内のニューロン同士が互いに結合したとき、すなわちシナプスを増強したときに記憶が生まれるという。短期記憶の場合、この作用は数分から数時間だが、長期記憶ではシナプスの増進が恒久化するという話だ。重要なことが何度も生じると、ニューロンの電気信号が繰り返し強く発火することで、記憶が強化されるようだ。ニューロンは脳に千数百億もあり、その全容は未だに解明されていない。まあとにかく、ニューラルネットワークとは、このニューロンというか脳神経ネットワークをモデルとして作られたものだ」
猿田くん「コンピューターは最初から計算する道具として、2進法をベースに設計されていますよね。このニューラルネットワークは、脳をモデルにしているのは分かりましたが、具体的に何を目的として、何ができるように設計されたのでしょうか?」
天馬「鋭いね。コンピューターは、確かに最初から高速に計算することを目的として設計されていた。ENIACは10進法で設計されていたのだが。とにかくニューラルネットワークは、学習する機械の実現を目指していた研究者たちにより、研究対象として作られていた。
それでは次に、ニューラルネットワークの初期の歴史を話そう」

次は【人工知能3:パーセプトロンの華々しいデビューと挫折】

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