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人工知能講座3

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パーセプトロンの華々しいデビューと挫折

プレスリーが聴衆を熱狂させていた1956年、アメリカのダートマス大学で、初めての人工知能会議が開催された。『ダートマス会議』として有名なもので、当時の人工知能研究者が一堂に会した6週間にわたるワークショップだった。有名なミンスキー教授などが主催したのだが、その時代にはすでにいくつかの知能モデルが提案されていた。しかし当時はそれを実証できるマシンは存在していなかった。
その頃、コーネル大学のローゼンブラットは、ニューラルネットワークをパーセプトロンと呼び、人間の学習、記憶、認識の効果的モデルとして機能することを、証明しようとしていた。
ローゼンプラットは、眼の網膜に着目して視神経をモデルにしたネットワークを考えていた。当時、神経の成長はランダムで繰り返されることで神経連結が強化され、そうでない神経連結は弱められることで、学習が進むと考えられていた。したがって、網膜のように光電管を並べて、神経にあたる接続を最初はランダムにし、学習結果を見ながら配線を調整するような視神経のモデルをつくれば、形を見わけることができるはずとローゼンプラットは考えた。そこでパラメータの初期値はランダムにし、次のような方法でパラメータを自動調整することを考えた。

★学習用サンプル多数と教師信号を用意する
・学習サンプルを1つ与えて出力値を得る
・出力値が教師信号と同じならパラメータはそのまま、異なるならパラメータを更新
・別の学習サンプルを与えて、差分が指定値より小さくなるまで繰り返す

この単層パーセプトロンは、学習用サンプルを用いて試行錯誤を繰り返し、単純な図形やアルファベットなら学習することができた。ローゼンブラットは、大規模なパーセプトロンを開発することで、複雑な図形も学習できるようになると主張した。するとサイエンス誌が、『人間の脳を取り換える?』というセンセーショナルなタイトルでパーセプトロンの記事を掲載し、ローゼンブラットは一躍脚光を浴びた。これがきっかけで、最初の人工知能ブームとなるのだ。

伴くん「では、その頃からマシンが学習できていたのですね。それは凄いことですね」
愛さん「そんな凄いマシンなら、どんどん進化していったのですか?あまり聞いたことがありませんが」
天馬「このパーセプトロンは、言語の音や活字の認識といった単純な作業で学習能力があることを、初めて実証してみせた。しかし当時の人工知能の権威であるミンスキー教授は、パーセプトロンをいくら追及しても、すぐに限界が来ると厳しく批判したのだ」
伴くん「なぜですか?素晴らしい研究なら一緒に進めればよいのに」
天馬「当時のアメリカの大学の研究室は、権威がものを言う社会であり、研究予算も常に取り合っていたのだ。人気のパーセプトロンに多額の研究費を取られると、それまで主流派だった論理学をベースにしたミンスキー教授たちの研究費は減らされてしまうのだよ。この争いは、その後10年もの間続くことになる」
猿田くん「決着はどうなったのですか?」
天馬「1969年にミンスキーは、単層パーセプトロンが線形分離可能な問題しか学習できないことを、反論の余地がないほど数学的に証明してしまったのだ。世の中の問題の大半は線形分離不可能な問題だったため、パーセプトロンへの研究資金は一夜で消えてしまい、ニューラルネットワークは、その後10年以上の冬の時代に突入してしまった。しかも、この話には続きがある。ローゼンプラットはパーセプトロンが抹殺されてから、すぐに事故で亡くなってしまうのだから、これも悲劇的な話だ」
愛さん「ちょっと待ってください。線形分離可能な問題しか学習できない、とはどんな意味ですか?」
天馬「君たち、そもそも学習するとは、どんな意味だと考えている?猿田くん」
猿田くん「え~と勉強して覚えることですか」
愛さん「それでは丸暗記じゃない。応用問題ができないことになるでしょう。似たような事なら出来るようになったら、学習できたと言ってよいのでは?」
伴くん「そうか。学習用サンプルに共通するパターンを見つけたら、学習できたことになるんだ」
天馬「君たちは理系なのだから、もっと論理的な表現をしてもらいたいね。まあ伴くんの答も良いが。このコンピューターの世界というか、機械学習や深層学習では、学習するということとは、正しく分類できたという意味で使う場合が多い」
愛さん「え????」
天馬「マリリン、線形分離可能と線形分離不可能を説明する図を、探して表示してくれ」
マリリン「これでよろしいでしょうか」

天馬「いいね。線形分離可能とは、この図の左のような場合で、右は線形分離不可能の場合だ。例えば動物の写真がたくさんあって、それを猫・犬・猿などと正しく分類できたら学習できたことになる。つまり線形分離不可能とは、何らかのデータが多数あった場合、それを分類する際に右の図のように、単純な直線式では分類できないことをいうのだ」
伴くん「そうか!猫の写真をたくさん見ることで、猫を犬とか他の動物から見分けられると、つまり分類できると猫を学習できたというんだ」
天馬「その通りだ。」
愛さん「なるほど、分かりました。世の中のほとんどのことは、それほど単純に分けられないので、パーセプトロンは見放されたのですね」
猿田くん「パーセプトロンを抹殺したミンスキーたちの主流派は、その頃どんな人工知能を研究していたのですか?ライバルを否定するだけでは、ダメじゃないですか」
天馬「今回の講義は、現在主流となっているニューラルネットワークを中心に説明をしている。先ほども話したが、人工知能研究の歴史は、コンピューターの歴史と同じように長い。だから人工知能に関しては、様々な思想や考え方が数多く登場したので、とても全部説明しきれるものではないんだよ。しかしまあ簡単にだが、その時代の状況を説明しよう」

次は【人工知能講座4:古き良き時代の人工知能】

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