AIを用いて人材採用業務を代行するサービスがいよいよ始まってきた。日本経済新聞の記事によると、ANAが2018年卒の事務職採用からGROWの利用を義務づけたそうだ。GROWとは、スマホのアプリで自己分析と友人からの評価を加味して、採用企業側とマッチングするシステムだ。ネット企業や三菱商事などでもこの「AI採用」に動いているという。

この「AI採用」の仕組みとは、基本的には応募者の性格診断データと採用企業側の採用基準をマッチングさせているだけだ。「AI採用」と称しているが、機械学習の応用であり、性格診断データと対になる企業側の採用可否判断データが大量にあれば、比較的簡単に作れる。
私も2年ほど前に、機械学習の試作システムを開発し、採用可否判断実験を実施したことがある。その結果、実際の人間の面接結果と9割合致したので、その精度に自分で驚いたことがある。学習に十分なデータ量があれば、機械学習の判断は正確なのだ。

ただ、現在若者の人口は減ってきており、新卒採用においては学生側がどんどん有利になってきている。このため企業側は、この「AI採用」を単純な「足切り」に使うわけにはいかない。このような「機械的判断」で学生を評価すると、どうしても特定の学生だけに合格が集まり、不合格学生はすべて不合格になってしまう。つまりマッチングの偏りで、企業側は新卒を採用できなくなる恐れがあるからだ。
もちろん企業側の採用基準が各社でバラバラなら、多様な学生が希望する企業に入社もできるだろう。しかし日本の大企業は、ダイバーシティ重視とか言っていても、概して学業優秀で生真面目な学生を採用することになり、個性的な人物は採らない。これが日本の大企業が軒並み沈没していく遠因だと思っているのだが。

人間とは成長する生き物であり、ある一時期に取得したシンプルなデータだけで、その人物のポテンシャルや将来性は判断できない。人間の面接官の方が、正しい判定ができるとは私は言わないが、単純な「AI採用」によって金太郎飴のようなワンパターン人材ばかり採っていると、変化の激しい時代では企業活力が削がれていくのは確かだろう。