つい3ヵ月ほど前に、「深層学習はビジネスで使いづらい」を書いたばかり。しかしその後3月16日にリクルートテクノロジーズが「A3RT」を発表した。これは機械学習や深層学習のAPI群で、リクルートグループ内で利用してきたものを、誰でも利用できるように一般公開した素晴らしいサービスだ。このサービスのインパクトは大きいと思われるので、こんなタイトルで書いているのだ。
現時点でA3RTが提供しているサービスとしては、次の6種類のAPIである。

■word2vecのアルゴリズムを利用してレコメンドリストを生成するListing API
■CNNで画像の影響度を判別するImage Influence API
■CNNで文章を予め与えられたラベルに自動的に分類するText Classification API
■LSTMで文章の自動生成および入力補助を実現するText Suggest API
■LSTMで文章として怪しい箇所を検知するProofreading API
■LSTMで入力文から応答文を生成して日常会話応答を提供するChatbot用のTalk API

CNNを用いた画像系のAPIなら、GOOGLE CLOUD VISION APIや、Microsoft Computer Visionなどが既にある。CNNは実用的なアルゴリズムとなってきたので、既に利用している企業は日本でもいくつかあるだろう。しかし日本語の自然言語処理系で、CNNを用いたText Classification APIとか、LSTMを利用したChatbot用のTalk APIが、一般に公開され利用できるようになったのは、日本で初めてではないだろうか。

Chatbotは昨年の秋ごろから、様々な企業が利用を開始している。インターメディアプランニング社の「Repl-AI」は、誰でも簡単にChatbotが作れるサービスとして、昨年夏頃から提供が始まっている。しかし、このLSTMを用いたTalk APIはユニークだ。

簡単なChatbotの場合は、入力された文章の中に定義した「キーワード」があったら、単純に分類して、やはり用意された文章で返事するというものだ。Q&Aの代わりのヘルプデスクサービスなら、これだけでもかなり役には立つ。しかし、定義されていない言葉だと、トンチンカンな返事しかできないので、日常会話はできない。
このTalk APIを私は試していないので、実際にどの程度の「日常会話」ができるかわからない。しかしRNNの改良版であるLSTMを利用しているなら、入力された言葉の中から、「適切な」返事を選べると思われるので、「会話」を続けることは不可能ではないはずだ。

また、Proofreading APIやText Suggest APIが実用的なレベルだったら、この応用範囲は非常に大きいだろう。文章を作成することは、業務の大半を占めているので、ここの技術は重要。しかし、このA3RTのWebサイトで公開されていた資料の中に、誤字を見つけてしまったので、今一つ信用できないのだが。ま~学習を進めればレベルも向上していくだろうな。
とにかく、このような最先端の技術を一般に無料で公開してしまったリクルートテクノロジーの度量の大きさには感心した。日本企業には非常に珍しい企業風土だ。このようなAPIの形式なら、アルゴリズムを理解していなくても、簡単にディープラーニングなどのAI系技術を利用できてしまう。APIの場合だと、実際に商品化となると細々とした仕様の違いを実現できないことが多い。それでも、とりあえずAI関連商品だと宣伝できるので、流行っていくだろうな。