CEATECが幕張で10/4~10/7開催されていたが、なかなかの盛況だった。しかしTVでずいぶん紹介されていたAIを応用した製品は意外に少なく、探すのに苦労してしまった。
それでも昨年の展示会とは大違い。1年前からマスコミは人工知能ブームと騒いでいたが、実際にAIをまともに利用した製品を出品していた日本企業は、昨年だとほぼ皆無。人工知能XXとか宣伝している商品やソフトもあることはあったが、内容やアルゴリズムを問われると、怪しげな答えばかりだった。
もっとも1年前では、大手クラウドベンダーが機械学習のサービスを提供したばかりで、機械学習の開発環境を整えることすら苦労していたので、しかたがない。ましてや深層学習(ディープラーニング)などという言葉は通じなく、やっと日本企業は研究を始めたばかりの「時代」だった。AI系ソフトの進化は著しい。わずか数ヵ月で状況が刻々と変化していくのが、展示会に行くと体感できる。
実際あれから1年経ち、機械学習(マシンラーニング)は着実に実用化が進んできているようだ。もっとも、面白かったのはアメリカ企業DataRobot社の製品。日本ではリクルートや新日鉄住金ソリューションズが販売代理店をしている、「機械学習自動化プラットフォーム」というデータ分析用のソフトウェア。
機械学習は、数値データを分析するには強力な手段なのだが、2年前までは専門家がいない限り手が出せなかった。しかし2015年になると、MS Azureが様々な機械学習アルゴリズムを提供するサービスを開始したので、一気に機械学習のハードルがさがり、専門家でなくても機械学習が利用できるようになった。それでも機械学習は、どのアルゴリズムを選択するか、チューニングする際のパラメータ設定はどうするかなど、試行錯誤が必要だ。
このDataRobotは、データサイエンティストでなくても一般ユーザーが簡単に機械学習を利用できるように、データ投入さえすればアルゴリズム選択とチューニングまで自動化している。実際に機械学習を利用している人ならわかるはずだが、この最も面倒で時間のかかる工程を自動化してくれているのはありがたい。実際に私は使っていないので、その使い勝手はわからないが、機械学習をデータ分析に利用する際の労力が、大幅に削減できることは確かだろう。

CEATECで見つけたわけではないが、三菱電機から『世界初、ディープラーニングの自動設計アルゴリズムを開発』という発表が10/7にあった。
・独自アルゴリズムの開発により、AI の専門家に依頼しなくても学習データを用いてディープラーニングの自動設計が可能
・学習データがあれば、機器のシステムに依存せず自動設計ができるため、機器の使用環境に合わせた高度な推論処理を実現
・学習データの中から特徴的なデータのみを重複なく抽出することで、効率的に適切なネットワークを構築し、設計時の試行錯誤を削減
とあるが、具体的な内容は不明だ。ニューラルネットワークの各層を深くしたものがディープラーニングだが、そのネットワーク構造は、確かに設計によって変化する。アプリケーション次第だが、まだまだ研究段階なので、「このアプリにはこの構造が最適」のように決まっているとは思えないのだが。
機械学習がやっと手法が確立した段階であり、ディープラーニングをどのように利用するかは、もう少し時間がかかると考えていた。それがこの時点で、「専門家への設計依頼が不要となり、AI 導入コストを低減」とまで宣伝しているのだから、自信があるのだろう。三菱電機から発表があったというのも意外で面白い。10月中には論文を公開するようなので、期待して待ってみたい。

それにしても、機械学習もそうだが深層学習まで、その使い勝手を競うような「時代」になってしまうとは、この分野の圧倒的スピード感には驚くばかりである。