canstockphoto33469662U-NEXTマーケティングとアドバンスト・メディアは、9月14日に電話対応をAIで自動化するコールセンターシステム「AIコンシェルジュ」の提供開始を発表した。利用料金は電話4回線で月額50万円と、有人センターの半額以下だ。

AIの最初の職場はコールセンターだろうという話は、昨年からあった。実際にみずほ銀行とIBMワトソンが組んで1年以上市場テストをしていることは公開済み。そのワトソンの音声認識率はオペレータで88%、顧客で62%。質問への正答率は、回答候補の提示上位5位以内で85%。この数字で実用になると言っているのは、ワトソンはあくまでオペレータの補助業務だからだろう。回答の最上位候補の正答率が80%になったら人間のオペレータはお払い箱になるはずだ。

しかし今回発表になった「AIコンシェルジェ」は、最初からAIがユーザー対応する前提なのが凄い。AIが100%対応することは実際には不可能だろうから、専任のオペレータも必要のはずだが、月額50万円なら1名しか雇えない。4回線なので3回線は常にAI対応となってしまうが、本当に実現可能なのか心配になってしまう。

この「AIコンシェルジェ」のビジネスモデルは、既に稼働しているコールセンターの置き換えが前提だろう。模範回答が大量にないとAIを学習することができないからだ。コールセンターでは、オペレータの出入りが多いので、Q&A集や模範解答例のDBを大量に持っているのが一般的。新人オペレータが配属されると、この資料を使って一定期間教育に時間を費やすことになる。

したがって既存のコールセンターに、この「AIコンシェルジェ」を導入する際にも、AIに資料を読み込ませ、回答をチューニングすることになる。教育係は当然、ベテランオペレータだ。つまり、このオペレータの人はAIのために働くことになる。しかもAIへの教育が終了したら、自分が切られる運命にあるのだ。

企業はコストのことしか頭にないので、人間のオペレータよりAI対応の方がコスト削減になると分かったら、雪崩を打ってAI対応に切り替わっていくだろう。しかし実際には、かつて大企業のコールセンターが中国に移った時のように、対応レベルの低さに苦情が殺到して、ブーメランのように日本に戻ってきたような、紆余曲折はあるはずだ。それでもAI採用への流れは止まらず、AIによる職場の浸食は避けられないのだ。